概要
国土技術研究センターと沿岸技術研究センターが主催する第24回国土技術開発賞において、株式会社大林組(以下、大林組)が東日本高速道路株式会社と共同開発した「防水層にUFCを用いたプレキャストPC床版」(スリムトップ)が優秀賞を受賞というリリースニュースから「スリムトップ」の仕組みを見つめます。
「スリムトップ」国土技術開発賞 優秀賞を受賞
国土技術開発賞は、住宅・社会資本整備を支える建設技術の普及と新たな課題に対応する新技術の開発を推進するため、建設産業における優れた技術やその開発に貢献した技術開発者を表彰するものです。
第24回 国土技術開発賞優秀賞
防水層にUFCを用いたプレキャストPC床版(スリムトップ)
~UFCとコンクリートの合成構造であるUFC複合床版~
スリムトップは、橋梁のリニューアル工事において現場での防水作業を不要にする、コンクリート床版の取り替え工法です。
コンクリート上面にUFC(超高強度繊維補強コンクリート:Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)を重ねた複合構造のプレキャストPC床版(UFC複合床版)を用います。
プレキャストPC床版同士の接合部にも UFCを打設・接合することで、橋面全体を防水できる、国内外に前例のない技術です。さらにUFCには、常温で硬化する「スリムクリート」を採用しています。
床版取り替え工事にUFC複合床版を用いることで、従来の工事で実施していた現場での防水作業による工程遅延リスクがなくなり、通行規制期間を短縮できます。また、30年に1度の舗装更新時には、床版の防水作業が不要となるため、工期短縮や省力化に加え、道路のライフサイクルコストの低減にも寄与します。海外でも道路橋床版の老朽化が進行しており、技術の展開による国際貢献が可能です。
あらためて、スリムトップとは
スリムトップはスリムクリートの防水性能を利用したプレキャスト床版による床版取替工法。
従来のコンクリート床版は、アスファルト舗装のひび割れや橋面排水装置の損傷から生じる水の影響により、コンクリートや鉄筋の劣化が促進することが分かっており、床版内部に雨水を浸透させないための防水工を建設現場で行っていました。
一方で、高速道路リニューアルプロジェクトの床版取替工事においても、高速道路サービスの提供に向けて、施工期間中の工事規制日数を少しでも減らすことが求められています。
このため、従来規制期間中に行っていた防水工に着目しました。超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)であるスリムクリート®の防水性能を活用し、プレキャスト工場にてUFCとコンクリートとの複合構造とすることで、床版表面の防水性能をあらかじめ確保したプレキャストPC床版を製作します。現場での防水工が不要となるスリムトップは、高速道路リニューアルプロジェクトでの工期短縮、道路規制期間の短縮を図ります。
メリット
施工日数を短縮します
UFCとコンクリートとの複合構造であるPC床版をプレキャスト工場で製作、建設現場へ運搬して設置します。床版接合部にもUFCを用いることで、床版全面をUFCで覆い、床版の防水性を確保します。建設現場での別途の防水工が不要となることから、施工日数が短縮されます。
長期の防水性に優れています
プレキャストコンクリートの製造および供用中の荷重作用などによるひび割れが起こらないよう、
UFCの厚さは2~5cmとしています。 UFCは防水性を有するため、舗装を浸透した雨水はUFC上で排水され、従来の防水工と同様にコンクリート内部への浸透を抑制します。
実物大の床版切り出しモデルを用いた輪荷重走行試験により、設計供用期間である100年相当の使用状況を再現し、防水性能が保持されていること、十分な疲労耐久性を有すること、コンクリートとUFCとの一体性が確保されていることを確認しました。
また、プレキャストPC床版同士の接合部は、スリムクリートを採用したスリムファスナー®で接合することで、床版部と同様の防水性を確保しています。
資料引用:大林組
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社大林組
リリースニュース:
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220824_2.html
スリムトップ™
https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d230.html