大成建設
CO2排出量削減効果の評価システム「T-ZCB」を構築。自社施設での実証を開始。

sugitec

概要

建築物ライフサイクルにおけるゼロカーボンビルの建設を推進する大成建設株式会社(以下、大成建設)が計画段階で建築物のライフサイクルCO2排出量およびCO2削減技術の効果を可視化し、建築物の脱炭素化を体系的に評価するシステムを構築というリリースニュースを本日はお届けします。


ライフサイクルアセスメント(LCA)とは

ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)は、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。

LCAについては、ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントの国際規格の中で、ISO規格が作成されており、こうした流れを受けて、わが国の企業でもCSR報告書などでLCAが取り入れられている。下図は、機能が同じ製品AとBに関連するCO2排出量を、LCAを用いて比較した例。

製品のライフサイクルとLCAによる環境負荷(CO2排出量)算定のイメージ
出典:国立環境研究所 循環・廃棄物のまめ知識「ライフサイクルアセスメント(LCA)」

http://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/20070702.htm

生産段階のみに着目すると製品Bの方がAよりCO2排出量が少ないが、ライフサイクル全体を通してみると、逆に製品Aの方がCO2排出量が少ない。
このようにして、LCAは、製品・サービスのライフサイクル全体での環境負荷を明らかにすることにより、より環境に配慮した製品・サービスを検討するための有用なデータを提供する。
環境問題への関心が高まる中、LCAは環境負荷をより包括的に把握する手法として注目されている。

建築物の脱炭素化を体系評価するシステム「T-ZCB(ゼロカーボンビル)」

大成建設は、建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量を実質ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため、初期計画段階で建築物のライフサイクルCO2排出量及びCO2削減技術の効果を可視化し、建築物の脱炭素化を体系的に評価するシステム「T-ZCB(ゼロカーボンビル)※1」を構築しました。

本システムの適用により、お客様のCO2排出削減目標に沿った建設計画の立案を支援し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
また、現在計画中の大成建設グループ次世代技術研究所の建設において、「T-ZCB」を適用し、その有効性を検証してまいります。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築物のライフサイクルで発生するCO2排出量(図1参照)を把握し、削減することは、設計・施工者だけでなく建築物を所有・運用するお客様にとっても必要不可欠な取り組みです。

しかし、現在、建築物のライフサイクルCO2排出量の削減目標を設定し、その達成状況などを評価するシステムは少なく、特にオフィスや工場などの計画立案時において課題となっていました。

そこで大成建設は、初期計画段階において、建築物のライフサイクルでのCO2排出量と削減効果を可視化して評価するシステム「T-ZCB」を構築し、クライアントの脱炭素化に向けた要求に応える体制を整えました。

本システムは建築物のライフサイクルで発生するCO2排出量と削減効果を「調達、施工、運用、修繕、解体」のフェーズ毎に可視化して評価するとともに、その削減に寄与する主要な技術や大成建設が注力するZEB化技術と組み合わせ、連携させることで、段階的に建築物の建設計画を推進し、ゼロカーボンビルの実現を目指します。

資料引用:大成建設 図1 建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量のイメージ(円の大きさはフェーズ毎のCO2排出量)

本システムの特長は以下の通りです。

  • CO2排出量および削減効果を可視化した「T-ZCBチャート」で建築物を体系的に評価
    フェーズ毎の累積CO2排出量を可視化するT-ZCBチャート(図2参照)を作成し、建築物のライフサイクルでのCO2排出量削減度に応じて、50%削減を「ZCB-Ready」、75%削減を「Nearly-ZCB」、100%削減を『Net-ZCB』として定義することで、建築物のライフサイクルでのCO2排出量の削減状況を分かり易く評価し、体系化できます。
  • CO2排出量算出ツール「T-LCAシミュレーターCO2※2」の活用
    本システムは、建築物のLCA指針(日本建築学会)に準拠した評価体系を維持しつつ開発した、大成建設独自のCO2排出量算出ツールである「T-LCAシミュレーターCO2」を活用します。
    大成建設の脱炭素に係る蓄積技術やノウハウを活用して、短時間で容易に概算値を算出し、CO2排出量の削減効果を定量的に評価することが可能です。
資料引用:大成建設 図2 T-ZCBチャート

今後、大成建設は大成建設グループ次世代技術研究所における「T-ZCB」の実証を踏まえ、新規・改修案件において本システムを積極的に活用しながら脱炭素技術の提案・導入を推進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

※1
T-ZCB(ゼロカーボンビル):
建築物のライフサイクル全体でのCO2排出量を可視化して評価するシステムとして、LCA研究の権威である法政大学 川久保教授にご指導いただきながら、共同開発した。
※2
T-LCA シミュレーター CO2:
建築物のライフサイクルに係るCO2排出量や削減効果を、建築物の計画初期段階から解体までのフェーズに応じて概算値として算出することが可能なツールとして開発した。
建築物ライフサイクルCO2の評価ツール「T-LCA シミュレーター CO2」を開発 | 大成建設株式会社
建築物ライフサイクルCO2の評価ツール「T-LCA シミュレーター CO2」を開発のページです。大成建設株式会社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、自然との調和の中で安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいきます。

【参考1】フェーズ別CO2削減技術

資料引用:大成建設

おわりに

8月には上記の建物ライフサイクル管理サービス「LCMC」を発表している大成建設。
ライフサイクルを通してのカーボンニュートラル建設を推進するフラグシップを先んじて掲げるアクションは、世界の潮流に通じて行くでしょう。


参考・関連情報・お問い合わせなど

大成建設株式会社
リリースニュース:
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220909_8933.html

国立研究開発法人 国立環境研究所
https://tenbou.nies.go.jp/

新技術紹介調査・保全
技術開発でお困りですか?

スギテックでは、DXを推進していく中で、皆様が日々抱えている課題を解決するお手伝いをさせていただきます。

「技術開発を考えているが実現できる技術なのか?」「こんなことをやりたいと思っているが、費用は大体いくらかかるのか?」等、気軽に相談や見積もりができる所をお探しの方は、是非お気軽にお問い合わせください。

SUGITEC|建設業界の最新技術紹介
タイトルとURLをコピーしました