概要
清水建設とデンカが共同開発したコンクリートの凝結時間制御技術「アドバンストコンクリートフィニッシュ工法(ACF工法)」を栃木県内で施工を進めている「獨協医科大学日光医療センター」のスラブ梁・約90m3のコンクリート打設の建築構造床の施工に初適用したリリースニュースを見つめます。
冒頭からですが、『積算資料』8月号から引用します。
(http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/40191)
新型コロナ禍とウクライナ危機の長期化により、国際的な資源・エネルギー、物流などのコストは高止まりが続いている。
中国の都市封鎖(ロックダウン)に端を発した東アジア地域の経済的混乱により一部の国際資源に需給緩和の傾向もみられるが、対露経済制裁や為替の円安進行等の要因を背景に、国内の建設資材の原材料コストは高い水準で推移している。
当会6月調査に基づく建設資材価格指数(全国・2015年度平均=100)は建築・土木総合で146.5となり、前月から1.6ポイント上昇。これで今年度第1四半期は6.6ポイントの上昇となり、前四半期のプラス1.6ポイントを大幅に上回っている。
こうした指数の動きからも、コスト上昇分の販売価格への転嫁を急ぐ供給側の姿勢が鮮明になっている。
『積算資料』8月号(7月8日までの調査結果)では、主要メーカーが値上げを打ち出しているセメントが札幌、新潟、大津、京都、奈良などで上昇。これにより、全国47県庁所在地のセメント価格は、今年に入り全地区でt当たり1,000~2,000円上昇したことになる。
(価格指数は今号よりウェイトの見直しを行っています。詳細なデータは以下のURLでご確認ください。
https://www.zai-keicho.or.jp/price_relative/)
また、ストレートアスファルトも前月に引き続き上昇。
t当たり前月比7,000円上伸の12万7,000円(東京地区・以下同)となり、直近1年での価格上昇率は50%を超えた。
一方、鋼材類では、原料となる鉄スクラップが海外相場の軟化の影響を受けてt当たり前月比7,000円下落の3万9,500円と続落した。これにより、異形棒鋼(SD295 D16)はt当たり12万円と2カ月連続で横ばいとなり、H形鋼(200×100×5.5×8㎜)もt当たり12万円と前月同水準で推移するなど、これまでの騰勢から一転、鋼材市況は踊り場局面を迎えている。
このような現状を見て頂いたように、より計画的で無駄の少ない資材調達の判断が求められている。
そうした中、完成の品質を保った上に、工期を短縮でき、資材を計画した量を使い切るとりくみが
清水建設のもとで施工されている。
コンクリートの凝結時間制御技術「アドバンストコンクリートフィニッシュ工法(ACF工法)」
清水建設株式会社(以下、清水建設)は先ごろ、コンクリートの凝結時間制御技術「アドバンストコンクリートフィニッシュ工法(ACF工法)」を建築構造床の施工に初適用しました。
ACF工法は、清水建設とデンカ株式会社(以下、デンカ)が仕上げ作業を伴うコンクリート施工の生産性向上・品質向上を目的に共同開発したもので、特長は、粉末状の混和材を生コン車に投入するだけで、コンクリートの凝結を促進できることです。
適用対象は、清水建設が栃木県内で施工を進めている「獨協医科大学日光医療センター」のスラブ梁・約90m3のコンクリート打設で、建築構造部材への適用に先立ち、一般財団法人日本建築総合試験所の建設材料技術証明を取得しています。
背景
仕上げ作業を伴うコンクリート施工は、施工場所にコンクリートを打ち込んだ後、コンクリートが凝結するのを待ってから表層を平滑化し、養生の準備を整えた段階で終了します。
コンクリートの凝結は気温が低くなるほど遅くなるため、寒冷期には、仕上げ作業に入るまでの待機時間が長期化し、状況によっては作業の終了時刻が深夜に及ぶこともあります。
また、コンクリートの凝結が遅れると練混ぜ水の一部がコンクリート表面に上昇するブリーディング※が長時間に及び、コンクリートの沈下ひび割れ等、表層部分の品質低下につながる懸念もあります。
こうした課題を解決するため、耐寒促進剤、早強剤、硬化促進剤等の液体状の混和剤を利用する場合もありますが、生コン工場で事前に試験練りを重ねたうえで配合設計を行う手間がかかります。
※ ブリーディング
打ち込んだコンクリート表面から練り混ぜ水の一部が上昇する現象。ひび割れの原因になる。
ACF工法の効果は?
ACF工法では、現場に到着した生コン車に凝結促進用混和材(ACF-W)を必要量投入し、ドラムを高速攪拌して均一に分散させるだけで、セメントの水和反応が活性化し、凝結促進効果が得られます。
凝結促進効果は気温が低くなるほど高くなり、寒冷期でも通常期と同等の凝結速度を確保できるため、仕上げ作業に早期に着手することが可能になります。
これにより、作業従事者を長時間勤務から解放でき、施工品質の向上も図れます。
適用現場では、冬期の低気温環境下、コンクリート1m3あたり3.3kgのACF-Wを添加し、表面積約500m2のスラブ梁を施工。
ACF-Wの凝結促進効果により、仕上げ作業に着手するまでの待機時間を通常工法と比べて3時間程度短縮することができました。
引き続き、仕上げ作業を伴う寒冷期のコンクリート施工にACF工法を積極的に展開し、作業従事者の働き方改革、仕上げ面のコンクリート品質の向上につなげていく考えです。
おわりに
「デンカACF材」が、寒冷地の青森県中泊町における清水建設の実工事で初めて採用されたプレスニュースが昨年の6月。
当時のリリースニュースでも、気温 5℃の低気温環境下で適用したケースで4時間以上の工事時間短縮や、ブリーディング低減により発生リスクが高い傾斜面の沈降クラック抑制の効果を確認している。
今回の清水建設側のリリースニュースでデンカ側は様々な工事場面での適用に向けて、デンカACF材の販売を本格的に展開できる実績例がひとつ増えました。
次の清水建設とデンカの化学反応はどんなものを見せてくれるのだろうか。期待したい。
本日も読んでいただき、ありがとうございました。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□清水建設株式会社
リリースニュース:
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022026.html
□デンカ株式会社
リリースニュース:
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/871/20210601_denka_acf.pdf
エラストマー・インフラソリューション部門 特殊混和材部
電話:03-5290-5558