海洋土木市場の今。そして、ブルーカーボン生態系を守る東亜建設工業の実海域実験

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概要

海洋土木の受注環境を見つめながら、ブルーカーボン生態系を守る東亜建設工業の実海域実験のニュースリリースをお届けします。

海洋土木の受注状況

海洋土木の受注環境が動き始めている。
2021年度に始まった政府の「防災・減災、国土強靱化 のための5ヵ年加速化対策」で、港湾における津波対策や老朽化対策などが重点課題として挙げられていることに加えて、2025年の大阪・関西万博に関連した工事や洋上風力発電などの建設増加で風が吹き始めている。

防災・減災機能の強化が求められる港湾施設

日本は海に囲まれ、日々の生活や産業活動の多くを沿岸部で展開していることから、港湾は生命線。
近年、自然災害が激化するなかで、人々の生活や産業・物流を守るためには港湾の防災・減災機能の強化は喫緊の課題となっている。

たとえば、政府が2019年6月に公表した南海トラフ巨大地震の被害想定によると、地震や液状化、津波による浸水及び火災などにより、被害額は最大で約171兆円に上り、港湾関連の被害は3兆円以上におよぶと想定。

特に、港湾機能の停止による経済活動の損失額は20兆円以上になると見込まれており、被災地域だけではなく、国内全域にわたる物流や産業活動にも甚大な影響が懸念されている。

さらに、社会インフラの老朽化は港湾にも及んでおり、建設後50年以上経過する港湾岸壁は2018年には約17%だったが、2023年には約32%、2033年には約58%に達すると試算されている。こうしたことからも、港湾の防災・減災機能の強化や老朽化対策が求められている。

高水準の浚渫・埋め立て工事が継続

国土交通省の建設工事受注動態統計調査によると、2021年度の公共機関からの港湾・空港関連工事の請負契約額は前年度比11.9%減の6470億円と減少。

東日本大震災の復旧事業が一段落していることに加えて、羽田空港に4本目の滑走路を整備する工事が10年に完了して以降、空港関連の大型プロジェクトがないことなどが要因とされるが、依然として高水準の工事が続いている。

しかし、浚渫(しゅんせつ)・埋め立て工事の請負契約額は前年度比8.2%減の2662億円となった。

大阪湾岸道路西伸部や島しょ防衛などの大型事業

防災・減災、国土強靱化 のための5ヵ年加速化対策に加えて、大型プロジェクトが続く。

その一つに「大阪湾岸道路西伸部事業」があげられる。
神戸市東灘区から長田区に至る14.5キロメートルのバイパスを整備する事業で、橋脚から延びる塔から三角形に張ったケーブルが橋桁を支える「斜張橋」を2橋建設する。橋脚部の工事については、2023年中に施工業者が決定する見込み。

さらに、大阪では2025年に開催が予定されている「大阪・関西万博」もひかえている。

そして、島しょ防衛の一環として防衛省が進めている馬毛島の施設整備も注目されている。

馬毛島は鹿児島県西之表市の大隅諸島の島の一つだが、南西諸島は自衛隊の活動・訓練拠点の「空白地域」であることから、自衛隊の活動拠点を整備する計画で、物資用倉庫や港湾施設、航空施設などが整備される計画がなされている。

その防衛省の馬毛島における施設整備に関連して、防衛省九州防衛局から仮設プラント製作・設置工事を受注している東亜建設工業株式会社ブルーカーボン生態系の拡大に向けた取組みである直立の護岸等の港湾構造物に海藻を着生させる実海域実験のニュースリリースをお届けします。

ブルーカーボン生態系の拡大に向けてのとりくみ

東亜建設工業株式会社(東京都 以下、東亜建設工業)は、ブルーカーボン生態系の拡大に向けて直立の護岸等の港湾構造物への海藻着生に関する技術検討を進め、実海域実験を実施しています。

技術検討の背景

国土交通省港湾局では、脱炭素社会の実現に向け、物流や人流の拠点となる港湾においてカーボンニュートラルポートの形成に関する検討を進めており、港湾・沿岸域におけるブルーカーボン生態系を拡大させる取組みを推進しています。

東亜建設工業では、ブルーカーボンに関する技術のひとつとして、直立港湾構造物に海藻を繁茂させ、CO2吸収機能を持たせる技術を検討しています。

そこで、関東地方整備局の実海域実験場提供システムを活用し、横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物に海藻の着生および生育を促す着生基盤を設置してその効果を検証しています。

実海域実験の概要

□実験概要
東亜建設工業の考案した海藻の着生及び生育を促す角部を有する突起形状の着生基盤(実験基盤)と、比較のために直立構造を模した平板形状の着生基盤(対照基盤)を用いました(写真1)。

2021年2月に横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物にこれらの着生基盤を設置し(図1、写真2)、設置約1年後に海藻の着生状況を確認しました。

□検証結果
実験基盤においては、突起形状の角部を起点として海藻であるアオサ属等の緑藻類の着生が認められました(図2)。

一方で、対照基盤においては、緑藻類の着生がほとんど認められず、実験基盤での海藻着生の有効性が確認されました。
このことから、直立構造物に対して角部を有する着生基盤の設置による形状の変化を与えることによって、海藻の着生を促し、CO2吸収源となるブルーカーボン生態系の形成につながることがわかりました。

資料引用:東亜建設工業 写真1 着生基盤
資料引用:東亜建設工業 図1 着生基盤及び直立港湾構造物(スリットケーソン)におけるその設置位置
資料引用:東亜建設工業 写真2 海中における着生基盤の設置状況
資料引用:東亜建設工業 図2 設置約1年後の着生基盤の海藻付着状況

今後期待される効果と展開

海藻が生育することによって生物の餌や住処の提供につながり、東亜建設工業の考案した形状の基盤は海藻によるCO2吸収機能だけでなく、生物多様性を維持する生態系の構築や栄養塩吸収による水質浄化等にも役立つことが期待できます。

今後は、海藻の生育状況と着生基盤への生物の着生状況を引き続きモニタリングしていきます。

多様な海藻がより効果的・効率的に着生・生育しやすい形状や方策を検討するとともに、カーボンニュートラルポートの形成に資する技術として全国の港湾への展開も検討していきます。

おわりに

ライターにとっては「ブルーカーボン」を知るきっかけになるブログ記事でした。

護岸を建造し、その地域を守りつつ、海とともに生物の住みかとして時をかさね、生態系を維持していく海洋土木のとりくみが、日本の港湾、世界へと展開していくことを期待しています。

本日も読んでいただき、ありがとうございました。


解説

ブルーカーボンとは
2009年に国連環境計画(UNEP)によって命名された「藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素」のことです。
ブルーカーボンを取り組む海洋生態系には海草藻場・海藻藻場・塩性湿地、干潟・マングローブ林があり、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれます。

地球上で排出された二酸化炭素は、一部は陸に、一部は海洋に循環します。
二酸化炭素は海中で、生態系に光合成され有機炭素(ブルーカーボン)として貯められます。
注目すべきなのは、海洋の植物の方が陸の植物より、排出された大気中の二酸化炭素を吸収する割合が高いことです。
海洋の生態系の二酸化炭素吸収率は約30%で、陸の生態系の二酸化炭素吸収率は約12%です。
二酸化炭素を吸収し、貯める海洋生物は、全海洋面積のたった0.2%ほどしかない沿岸域に集中して住んでいます。
海洋面積は地球上の70.6%を占めますが、それを考慮しても陸上の生物よりも二酸化炭素吸収量は多いことが伺えます。

参考・関連情報・お問い合わせなど

東亜建設工業株式会社  https://www.toa-const.co.jp/
リリース記事:https://www.toa-const.co.jp/company/release/2022/220613.html
経営企画本部 経営企画部広報室 北川 TEL:03-6757-3821 / FAX:03-6757-3830

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/

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