概要
竹中工務店とYSLソリューションが共同開発したBIMとiPadを用いた設備施工管理記録の作成・管理手法を紹介。
株式会社竹中工務店(大阪 以下、竹中工務店)は、株式会社YSLソリューション(神奈川 以下、YSLソリューション)と共同で、BIMとiPadを用いて設備工事の各種検査・試験の記録作成を行いデジタルで一元管理をする、新しい設備施工管理手法を開発しました。
これにより、竹中工務店ならびに設備協力会社の書類作成の省力化と、BIMとデジタルデータに基づく確実な施工エビデンスの記録・管理を実現し、生産性向上を図るとともに、建設現場の働き方改革の推進、建設業の魅力向上をめざす。
開発手法の概要
これまでの管理手法ではWindowsタブレット端末をハードウェアとして使用していましたが、新しい管理手法では、広く建設業界で導入されているiPadをハードウェアとして使用しました。
また、ソフトウェアにはYSLソリューション社の建設ドキュメント共有アプリであるCheX(チェクロス)※を使用し、iPad上でBIMモデルを確認しながら、
- スリーブ検査
- 区画貫通記録
- 配管圧力試験
- 配管排水試験
- その他汎用記録
の検査・試験を実施し、その記録を自動作成します。
また、これら複数の異なる検査・試験の記録を、BIMモデルと紐づけてデジタルデータとして一元的に管理することで、記録のペーパーレス管理、進捗管理が可能になりました。
プロジェクトでの検証・評価
竹中工務店作業所において検査準備・試験計画作成から記録作成までの業務量全体で検証したところ、スリーブ検査では約25%、配管圧力試験と配管排水試験では約20%の業務量削減効果を確認しました。
また、従来は紙で管理していた検査記録(試験データ・立会写真・試験範囲図)を、BIMを中心に一元管理することで、検査記録作成の効率化と、検査進捗の見える化による検査忘れの未然防止効果も得られることを確認しました。
汎用性と普及性の向上
BIMモデルは検査・試験用に特別に作成したBIMモデルではなく、Rebro※・Tfas※・Revit※等で施工図用に作成したBIMモデルをIFCファイル形式※で出力したものをCheXに登録することで、今回の開発手法の適用が可能になり、これまで以上に汎用的に、かつ総合建設会社・専門工事会社が使用するBIMの種類を問わず、広く適用できるようになりました。
おわりに
イギリス政府が提示しているBIMレベルはレベル0から3まで4段階にカテゴライズされている。
レベル0は、純粋に2Dをベースとした設計。
レベル1は3Dモデリングを補助的に使う2Dベースの設計。
現状、成熟しているのは、
建築・空調・衛生・電気の情報を盛り込んだ総合的な3Dベースの設計を行うレベル2。
次のレベル3になると、より広範で総合的な情報で建物のライフサイクルを管理する理想的な運用レベルに至る。
着実に日本の現場でのBIM普及の歩みは街の成長とともに進む。
最後に、
国土全体をBIMモデル化する「バーチャル・シンガポール」のプロジェクト動画を添えて、本日は筆をおきます。
読んでいただき、ありがとうございました。
参照・説明
※ CheX(チェクロス)
サービス名称:「CheX」(チェクロス) 公式リリース:2012年
製品HP:https://yslappsmedia.chex.jp/chex/
スマートデバイス上で図面の閲覧や、図面へのメモを関係者と共有可能なアプリ。
手書き・テキスト・写真でのメモ・共有が可能。電子黒板等にも対応。
スーパーゼネコン5社を中心に、毎月約14,000現場、16か国での利用実績。
※ Rebro
株式会社NYKシステムズが開発元のレブロは、最先端のBIMシーンでも活躍している建築設備専用3次元CAD。高精度な設備モデルを作成し、設計から施工、維持管理に至るまで情報をシームレスに展開。
https://www.nyk-systems.co.jp/
※ Tfas
株式会社ダイテックが開発元のTfasは機能に直結したわかりやすい操作性と設計者の意図が伝わる表現力の高い図面作成機能を備えた総合設備CAD。最新のグラフィック技術により、高速3D表示、高速視点移動、輪郭や文字などの高精細な3D表現を可能とし、部材や機器との干渉検査や複雑な取り回しなど顧客との合意形成のシーンで最高のパフォーマンスを発揮。
https://www.daitec.jp/index.html
※ Revit
AUTODEASKが開発元のRevitは建築、エンジニアリング、施工(AEC)のためのBIMソフトウェア。
品質の高い建物やインフラの構築を支えます。
https://www.autodesk.co.jp/solutions/revit-vs-autocad
https://www.autodesk.co.jp/products/revit/overview?term=1-YEAR&tab=subscription&plc=RVT
※ IFCファイル形式
IFC(Industry Foundation Classes)。
中立でオープンなCADデータモデルのファイル形式。 BIMのデータを流通させるためのファイル形式。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社竹中工務店 https://www.takenaka.co.jp/
リリース記事:https://www.takenaka.co.jp/news/2022/06/02/
□株式会社YSLソリューション https://www.ysl.co.jp/
リリース記事:https://yslappsmedia.chex.jp/news/news-release-20220613/