劣化診断の難しさ
今や多くの調査診断会社でも取り入れられている赤外線サーモカメラを使った建物外壁などの 劣化診断法。
度々ご紹介させていただく赤外線カメラの話題ですが、外壁の劣化を赤外線カメラでの撮影で検出する。とても便利ですね!撮影さえできれば誰でも診断できるんじゃないか?って言うほど簡単なものではないのは、これまでのブログでもお伝えしてきました。
そう!解析する力です。「赤い所が浮いてるんだろ?」そんな単純なものでもないのです。
打診調査に完全にとって代わる万能のものではない
赤外線カメラだけで全ての劣化が明らかになり、調査が完結する。というイメージがありますが、 実際に調査されている方なら良くお分かりだと思いますが、実はそこまで万能のものでもありません。
やはりそれなりの誤差というものが画像を通して出てきます。
外壁タイルなどの調査の場合、基本的には温度の高い部分が「タイルの浮き」という判断になりますが 、例えばその「浮きがある」と思わしき部分が、過去に補修工事をおこなっており、周りとは違う材質の 補修材などを使用していた場合、それだけでも熱の反応が異なる場合が多いので、赤外線カメラでは 差異として検出されます。
実際は浮いていないのに、です。画像でそこに差異があっても、当然「そこが劣化している」という判断にはなりません。
ただ過去の補修履歴があったとして「そこは補修しているから反応出るのは当たり前だ」ということでそれを無視をしていいものでもありません。
反応が出ている以上は当然確認の為にも調査は必須です。 そこでの調査方法は打診調査、ということになります。
調査において、やはり人の手と感覚による打診が一番明確な判断ができます。(勿論それも音と感覚で聞き分ける経験値が必要ですが)
だからといって全面打診は労力・コスト的にも大変です。全面叩かずともピンポイントでホットスポットを見つけられるところが赤外線カメラの強み、優位性と言えます。
全ての建物でそうではありませんが、赤外線カメラのみの判断による調査報告書では不十分な物です。 過去の補修改修履歴、また、反応部分の打診確認を含めてはじめて信頼性の高い報告書になると言えるでしょう。
赤外線調査とは(まとめ)
赤外線サーモカメラによる調査診断はそれだけで完全に劣化を判断できるような万能のものではありません。
劣化と思われる部分を容易に特定できるのは大きな強みですが、その結果から明確な劣化と判断するには 打診調査など人の手と感覚による調査が必須です。
赤外線調査には建物に関する知識と経験は必須。その経験値が多いほどサーモグラファーとしての知見が養われていく。目の前の劣化だけでなくその改修方法~その先までをも見据えられるのが理想だ。