こんにちは。ドローンによる点検技術が活用される範囲は年々増加しています。近年では太陽光発電パネルや風力発電設備の点検も、従来のマンパワーによるものではなくドローンによる効率化が加速しています。
本日は、関電プラント株式会社（以下、関電プラント）が、洋上の風力発電設備の効率的な点検を実現し、運用・維持管理費用の低減を図る点検技術の開発を発表したという話題をご紹介。
浮体式洋上風力発電における点検技術の高度化に向けた開発
この開発に至る経緯としては、NEDO（国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構）の公募する「グリーンイノベーション基金事業」の「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」に対し、関電プラントが「浮体式風車ブレードの革新的点検技術の開発」を応募し採択を受けたものとなります。
グリーンイノベーション基金とは（NEDO）：https://green-innovation.nedo.go.jp/about/
目的としては、ドローンを活用し、浮体式洋上風力発電設備の効率的な点検を実現し、運用・維持管理費用を図ることで、技術的な面では、洋上にある浮体式設備には波風によって位置が変動してしまうという特性がありますが、それに対応すべくリアルタイムな位置の推定と追従を可能にする制御技術を開発するというもの。
同社では2020年10月より研究を開始している「ドローンとAI画像解析の活用による洋上風力設備の運用・維持管理技術」があり、今回開発する技術とこの技術を組み合わせることで、洋上や陸上を問わない風力発電設備の維持管理の効率化に貢献できるとしています。
浮体式風力発電設備の外観点検用ドローンとはどんな技術か？開発技術は３点
１点目は、前述の通り、浮体式の発電設備は下図のように海底の地盤に固定されていない状態であるため、波浪や風により風車の全体が変動してしまいます。そのためにドローンで点検を行おうとする場合、変動する風車の位置情報を正確に把握しなければならないという点が課題としてあります。
これの解決方法として提示されているのが、GPS等を活用して風車のリアルタイムな位置情報を推定することで、ドローンを追従させ点検を実現させるというもの。
資料：関西電力
２点目は、ダウンコンダクターと呼ばれる、雷電流を安全に大地に放電するための設備の導通試験をドローンで行うというもの。従来では、ロープワークによって導通試験の度に風車のブレードを下向きに回転させる必要があり、そのために点検期間が長期化することで、設備停止の期間も長くなるという傾向があったそうです。
それの解決方法として、ダウンコンダクターの接点用器具をドローンに搭載することで、人ではなくドローンによって導通試験を実現させるというもの。従来のように試験の際にブレードを回転させることなく、迅速な試験を行うことを可能にします。
資料：関西電力
３点目は、ブレードのひび割れに対する打音検査を行うもので、従来ではロープワークで行っていたそうですが、これもまた導通試験と同じく、検査の度にブレードを下向きに回転しなければならず、点検期間の長期化とダウンタイムの長期化という課題があったそうです。また、人が行うため墜落災害の危険性や波風の影響で実施できないという場合もあります。
解決方法としては、ドローンに打音デバイスを搭載することで、ドローンで打音検査を実現させます。こちらもブレードの回転を無くせることによる停止期間の短縮、作業の迅速化と、安全かつ確実な検査を可能にします。
資料：関西電力
以上のように、ドローンによって浮体式風力発電設備の各種点検を実現することで、運用・維持管理のさらなる安全性向上や効率化を図っていくとしています。
資料：関西電力
洋上での点検は波風による影響がかなり大きく、作業効率もそうですが安全性にも不安が残ります。この技術が実現すれば、陸上にもおいても活用できそうです。尚、このプロジェクトの事業期間は22年3月から25年2月の3年間となっています。
□関電プラント株式会社
浮体式洋上風力発電における点検技術の高度化に向けた開発について～グリーンイノベーション基金事業を活用～
リリース記事：http://www.kanden-plant.co.jp/news/10036183_15723.html
