記事のポイント
・日本化薬株式会社（以下、日本化薬）が、兵庫県養父市（国家戦略特区）の協力で、同社の開発している産業用ドローン向け緊急パラシュートシステム「PARASAFE®」を用いた実証実験を10月26日に実施したと発表した。
・実証実験の結果「PARASAFE®」により、十分にドローンの降下速度を減少させることができ、ドローン本体にも大きな破損や欠損は見られず、地面への衝突エネルギーを最小限に抑えられたことができたことから、その有効性が確認されている。
「PARASAFE®」の実証実験を実施し、ドローン緊急降下時のパラシュート有効性を確認
兵庫県養父市の協力で日本化薬の実施したドローンのパラシュートシステムの実証実験は、今後ドローンの活躍が見込まれる市街等を飛行中の緊急時の安全装置としての有効性確認を行うことが目的で実施されている。
実証実験によって、パラシュートシステムの有効性が証明されることで、ドローンの運用に安心感が生まれることで普及が促進され、新しい業界業種でのドローン利活用が推進されることに繋がる。ドローンの機体本体とその搭載物、そして人命を守るための検証により、社会におけるドローン活躍の場をさらに広げるための実証実験でもあったという。
出典：日本化薬株式会社
行われた実証実験の手順は以下となる
①下図に示された離陸地点からドローンを離陸。グラウンド中央の降下地点上空まで高度約40mで飛行
②降下地点上空にて高度約40mをホバリングするドローンのモーター動源を意図的に切断し、プロペラを停止
③予めプログラムされたシステムにより、モーター動源切断から1.0秒後にPARASAFE®が作動しパラシュートを射出
④ドローンがパラシュート降下し、地上に着陸
⑤着陸しているドローンを写真撮影し、離陸前ドローンと降下後ドローンを比較し評価
出典：日本化薬株式会社
以上の手順にてパラシュートシステムの実証実験が行われた。結果、パラシュートによって十分にドローンの降下速度を減少させることができたという。また、離陸前のドローンの写真と、パラシュート降下後の写真を比較してみても、ドローンに大きな破損や欠損がないことが分かる。
出典：日本化薬株式会社
このようにドローンの降下速度を減少させることができたことで、地面への衝突エネルギーを最小限に抑えることができたことが確認できている。またパラシュートによって降下時のドローンの姿勢を水平に近い形でキープすることができたことで、ドローンは脚の部分から着陸することができており、ドローン全体への衝撃を最小限に抑えることができた一因にもなっている。
出典：日本化薬株式会社
上記は降下後のドローンのパーツを撮影した写真だが、非常に折れやすい部品であるプロペラにも破損や歪みはなく、再利用できる状態であることが確認できる。またドローンに搭載しているバッテリーにもダメージは無かったという。
従来の電池に比べリポバッテリーはエネルギー密度が高く、大きな衝撃を与えると異常な発熱や発火の可能性があるそうだが、パラシュートでの降下により地面への衝突エネルギーが非常に小さく抑えられたことで、バッテリーが発熱・発火することが無かったといえる。各種の配線類に関しても断線等もしておらず、すべての配線が離陸前の状態と同じであることが確認されている。
出典：日本化薬株式会社
上記はこの実証実験で取得された高度データがグラフ化されたものだ。オレンジ色のグラフ部分が今回の実験で取得された高度データとなる。グラフではパラシュートが開傘した点を境として高度変化が緩やかになっていることがわかる。対して水色はパラシュート不使用時の理論値となる。この２つのグラフからパラシュートの不使用時は使用時と比べ、6倍以上の速度が発生し、ドローン着地時に大きな衝撃が発生することがわかる。
パラシュート降下を行ったことで、ドローンへのダメージがほとんど無かったことから逆算すると、パラシュート降下したドローンが地上の建物や人物に衝突することがあったとしても、建物や人物に与えるダメージはパラシュート無しで自由落下してきたドローンと比べると非常に小さくできると推測できる。
今回行われたの実証実験の結果から、落下したドローンの高度変化データからパラシュート使用時は不使用時と比べて落下速度を1/6以下に抑制することができたことが分かる。これらから実証実験ではドローン故障時等の緊急降下時のパラシュートが非常に有効であることを確認することができたといえる。
今現在、このような物理的安全装置はまだまだ一般的に広まっているとは言えない状況であるが、安全な飛行があってこそのドローン、今後このような有用な安全装置は必須になってくると思われる。
尚、この「PARASAFE」は、2022年に販売を開始する予定とのことだ。
PARASAFE公式サイト：https://parasafe.jp/
□日本化薬株式会社
日本化薬は自社で開発する産業用ドローン向け緊急パラシュートシステム「PARASAFE®」の実証実験を実施、ドローン緊急降下時のパラシュート有効性を確認
リリース記事：https://www.nipponkayaku.co.jp/news/img/pdf.php?acd=139
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PARASAFE®に関するお問い合わせ
日本化薬株式会社 セイフティシステムズ事業本部 エアロ事業推進室
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