記事のポイント
・株式会社熊谷組(以下、熊谷組)と立命館大学、東京工業大学、国立東京工業高等専門学校ら研究グループが、スマートデバイスを用いた建設機械の遠隔操作者の心理的負荷、操作技能を定量的に測定できる計測モデルを考案したと発表した。
・この手法は、操作者の心拍と身体加速度を用いて心理的ストレスを評価できる初めての事例となる。VRによる重機の遠隔操作はモニター操作よりも心理的ストレスが高いということが示唆されたという。
遠隔操作者の心理的負荷や操作技能を定量的に測定可能な手法が開発される
熊谷組は立命館大学、東京工業大学、国立東京工業高等専門学校らの研究グループは、スマートデバイスを用いて建設機械の遠隔操作者の心理的負荷や操作技能を定量的に測定できる計測モデルを考案。この計測モデルは21年9月16日0時に国際学術誌の「JMIR mHealth and uHealth」に掲載されたとのこと。
日本国内の建設業界では、自然災害による土砂崩れなどの二次災害を避け、安全な場所より建設機械を操作する遠隔技術が導入されている。特に建設機械の周囲にカメラを設置し、VR技術を用いた運転席から見た映像と機械の振動を同期させて遠隔操作する工法が注目されている。しかし、遠隔操作は作業環境における周囲の状況把握が難しいために、操作者の操作時の心理負担が大きく、操作者に配慮した操作システムを開発することが不可欠となっている。
出典:熊谷組
研究グループでは、スマートデバイスを用い、操作者の心拍変動(HRV)やマルチスケール・エントロピー(MSE)などを測定。これら指標は自律神経調節を定量的に示すものとなっており、業務においてのストレスを評価する有用な手段となっている。
研究成果では、操作ストレスを考慮し身体振動を許容範囲内に抑えることで、適切な運転時間を算出する手法を新たに開発したという。これまでの研究において未解明であった心理的負荷と身体振動の関係に着目し、これらを対象とした建設機械の走行時間との関係を明らかにしている。
出典:熊谷組
VRを利用することで、遠隔からでもリアルな現場環境を体感しながらの作業ができるのがひとつの強みでもあるが、リアルであるが故にモニター操作よりも心理的ストレスがかかり、長時間の操作には負担があるという結果が示された。
出典:熊谷組
リアルであるからこそのメリットも多くあるが、この研究結果から一概にリアリティの追求だけが正解という訳でもないということが分かる。今や多くの遠隔操作システムが開発されているが、適切な運転時間を策定していくことがひとつ大事な点であると言えそうだ。
□株式会社熊谷組
スマートデバイスを用いて遠隔操作者の心理的負荷や操作技能を 定量的に測定できる新しい手法の開発に成功
リリース記事:https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2021/pr_20210916_smart_1.html
□論文ページ(JMIR Publications):https://mhealth.jmir.org/2021/9/e31637