クラウド環境活用のトンネル遠隔臨場支援システム

sugitec

記事のポイント

・株式会社安藤ハザマ(以下、安藤ハザマ)と株式会社エム・ソフト(以下、エム・ソフト)、日本システムウエア株式会社(以下、日本システムウエア)、山口大学名誉教授中川浩二、筑波大学らで構成する「山岳トンネル遠隔臨場支援システム開発コンソーシアム」が、クラウド環境を活用した遠隔臨場支援システムを開発したと発表した。

・コンソーシアムは内閣府のPRISM(官民研究開発投資拡大プログラム)の枠組みを活用した国交省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定された。

トンネル坑内および切羽における施工管理の効率化、接触機会の低減を実現

安藤ハザマ、エム・ソフト、日本システムウエア、山口大学名誉教授中川浩二、筑波大学で構成する「山岳トンネル遠隔臨場支援システム開発コンソーシアム」が、クラウド環境を活用した遠隔臨場支援システムを開発した。

システムは、2020年11月から現場(国土交通省中国地方整備局発注 玉島笠岡道路六条院トンネル工事)での試行を実施し、建設現場の生産性向上に効果があることが確認された。2021年3月には、適用結果について国交省へ報告を行い、2021年5月に総合評価Bの標定を得たという。総合評価Bは技術の社会実装に向け今後の技術開発が期待されるという評価となる。

遠隔臨場支援システム特長

遠隔臨場支援システムは「トンネル全線の可視化システム」と「切羽地質情報取得システム」から構成される。各システムに実装された主な特長は以下となる。

トンネル全線の可視化システム
安藤ハザマが開発した「トンネルリモートビュー」を利用。トンネルリモートビューは、360度カメラを取付けた車両で坑内を走行しながら撮影しデータを取得。車速から走行距離を算出することで、GNSS等を使用できないトンネル坑内でも撮影位置情報を付与することができるシステムだ。


出典:安藤ハザマ

トンネルリモートビューで取得した撮影データをクラウドサーバに保存し、受発注者が専用ソフトを用いることなくウェブブラウザ上で撮影データを閲覧できる機能を開発した。閲覧画面の坑内距離カーソルをドラッグすることで坑内の任意の位置に移動。画面上をドラッグすることで視点が回転し、任意の方向の坑内画像を確認することができる。


出典:安藤ハザマ

切羽地質情報取得システム
従来の目視による切羽観察に代わるものとして、地質評価指標のうち、岩盤の圧縮強度、風化程度、割れ目間隔について定量評価を行う。他現場で運用を開始していた風化程度と割れ目間隔の評価に加えて、穿孔データによる圧縮強度の評価を今回の現場で開始した。


出典:安藤ハザマ

システムは、カメラやハロゲン照明、制御PCなどを1台の計測車両に搭載。切羽で取得した計測データと穿孔データを集約し、専用のソフトで処理を行うことで評価結果が出力される。
そして、システムによる地質評価結果を受発注者がクラウド上で共有できる機能を開発したという。日々の切羽の地質評価結果をクラウド上にアップロードすることで、受発注者が遠隔地でも切羽の連続的な地質状況を把握できるようになる。試行では、地質評価結果のクラウド共有による岩判定の省力化に対する効果について検証を行った。

システム適用の効果

遠隔臨場支援システムの適用により以下の効果が得られたという。

トンネル全線の可視化システム

  1. 概略管理(日常の管理)
    現場の状況を画面から把握することができ、施工管理の省力化が可能となった。
  2. 詳細管理(品質出来形の確認)
    施工中の覆工状況などを直接現場に行くことなく確認でき、接触機会を低減しつつトンネル工事の品質確保につなげることが可能となった。
  3. 監督管理(発注者による管理)
    クラウド共有により、発注者がトンネル全線の坑内状況を容易に把握することができ、現場巡視の省力化が可能となった。
  4. 教育・広報・パトロール
    若手職員の教育や一般向けの広報資料のほか、遠隔でのパトロールへの活用に効果が期待できる。

切羽地質情報取得システム

  1. 評価の高度化・省力化:従来の担当者による定性的評価が解消され、また、経験の少ない職員でも切羽評価が可能となった。従来の目視観察結果との比較では、支保パターンの選定では、一致率が100%、各評価項目では圧縮強度で95%、風化度で90%となり、高精度な地質評価が可能となった。また本システムの活用により、切羽の地質評価に要する時間を約50%削減することができたという。
  2. 現場臨検の省力化:本システムを用いて受発注者が地質情報を共有することで、定常の岩判定を遠隔実施として、現場臨場を省略することが可能となった。本試行の場合、現場臨場頻度を約5割程度減できる効果があることが確認された 。
  3. 安全性の向上:観察者が切羽に立ち入ることなく十分に離れた位置(約10m)から撮影作業を行うため、職員の肌落ち災害の防止に寄与。


出典:安藤ハザマ

今後、計測できる項目の追加や取得画像の高精細化といったシステムの改良を進め、当社の山岳トンネル現場に適用して施工管理のさらなる効率化に取り組んでいくという。また、既設トンネルや導水路などの維持管理工事における点検・調査や災害時の状況確認への活用を検討していくとのことだ。


□株式会社安藤ハザマ
クラウド環境を活用した山岳トンネルの遠隔臨場支援システムを試行
リリース記事:https://www.ad-hzm.co.jp/info/2021/pre/20210726.html

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