記事のポイント
・清水建設株式会社(以下、清水建設)は、東京大学大学院工学系研究科と共同で、建設生産プロセス合理化を目的とし、ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システムを共同開発し、その実用化に向けた研究開発に着手したと発表した。
・システムはブロックチェーン上に施工現場で収集した出来形計測データを格納することで、当該データの信憑性を担保するものとなっている。
出来形計測データをブロックチェーンに格納し、改ざんリスクを排除
清水建設と東京大学大学院工学系研究科は、共同で「ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システム」の実用化に向けた研究開発に着手したと発表した。
システムは保存情報に耐改ざん性を付与できるブロックチェーン上に、施工現場で収集した出来形計測データを格納することで、当該データの信憑性を担保するものとなっている。このシステムを発注者の出来形検査に展開することで、受注者が提出した検査帳票の根拠データの改ざんの検証をシステム上で実施可能となり、検査プロセスの合理化が実現できるという。
共同研究の第一弾として、ICT活用が進む土工事の出来形検査を対象としたシステムを構築し、2021年の11月にも実現場での試行を開始する見込みだ。
施工現場でのICT活用が加速するなか、受注者が現場で収集する出来形計測データを発注者の監督検査に活用するための技術基準類の整備が進められている。これら計測データを出来形検査の根拠データとして直接利用できれば、実地検査の省略などの検査プロセスの合理化を図れるが、前提として計測データの信憑性を確実に担保できる仕組みが不可欠である。
このような背景のもと「ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システム」は、書面確認のみで出来形検査の実効性を担保するためのプラットフォームとして開発されている。尚、システムの開発は、東京大学大学院工学系研究科が2018年10月に設立した「i-Constructionシステム学寄付講座」の研究活動の一環となる。
システムの基盤となるのは、ブロックチェーンとデータストレージ、入力値のハッシュ値生成プログラムで、出来形計測データをシステムに保存すると、入力データに紐づいたハッシュ値が生成され、ブロックチェーンに記録される。ブロックチェーン上の情報は改ざんができないため、検査時に検査対象データのハッシュ値を再取得し、ブロックチェーン上のハッシュ値と比較することで改ざんの有無を確認できる仕組みとなっている。
システムの実用化に向けた研究開発では、土工事の出来形確認に利用する点群情報の信憑性を担保するシステムの構築に取り組んでいく。また、点群情報と設計情報から施工誤差を判定するための解析・閲覧技術も新たに開発し、建設生産プロセスの生産性向上につなげていくとのことだ。
出典:清水建設
ブロックチェーン
インターネット上で複数のデータ記録を共有し、正しい記録をチェーンのように繋いで蓄積するデータ管理の仕組み。複数のサーバーが整合性を確認しながらデータの固まりであるブロックを繋げて保存するためデータの書き換えが事実上不可能である。これによって高い耐改ざん性を確保できる。
ハッシュ値
入力情報を不可逆的に変換する関数によって出力される固定値。
□清水建設株式会社
出来形計測データをブロックチェーンに格納し、改ざんリスクを排除
リリース記事:https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2021026.html
この記事に関するお問い合わせ
清水建設株式会社:https://www.shimz.co.jp/inquiry/