記事のポイント
・會澤高圧コンクリート株式会社(以下、AIZAWA)と、株式会社ハニカムラボ(以下、ハニカムラボ)は、HoloLens2搭載のヘルメット一体型デバイスのTrimble XR10を活用した遠隔臨場支援システムを共同開発した。
・システムは、札幌市発注の公共工事において、市職員立ち会いのもとで遠隔臨場を実施したとのこと。
MR活用の遠隔臨場支援システムを札幌市発注工事で国内初実績
MR(複合現実)は、マイクロソフトの「HoloLens」に代表されるウェアラブル専用ディスプレーを用いることで、仮想的物体を現実世界に投影するテクノロジーである。生産や施工の現実空間にデジタル化した書類や図面、3次元モデルなどを表示できるため、生産や施工現場を遠隔管理し、業務効率を大幅に改善することが期待されている。
AIZAWAは、グループである一級建築士事務所のADAAC株式会社を中心に、建築土木分野のDXを推進しているとのこと。MRの新たな活用方法の開発を目指して約1年前からハニカムラボとのコラボレーションをスタートさせている。
出典:會澤高圧コンクリート
遠隔臨場とは、工事現場や生産現場においてモバイル端末等による映像と音声の双方向通信を使用し、公共事業では通常リアルに行われる「段差確認」「材料確認」「立会」を遠隔から行うものである。
遠隔臨場用に開発されたシステムは、発注者が役所内で使うPC、計測者が現場で使用するヘルメット一体型のMRデバイス「XR10」、現場指揮者が現場作業の全体を進捗管理して役所に中継するために使うiPadの3つから構成されている。
出典:會澤高圧コンクリート
発注者は、公共事業を発注した場合、コンクリート部材等の製造・施工現場に定期的に足を運んで、契約通りの作業がなされているかの確認・立ち会いを行うが、システムを使うことで、役所にいながらにしてiPadからの映像を通じて現場の様子を把握できる他、XR10が映し出している計測者の手元の状況も詳細に確認できるようになっている。
検査項目のチェックリストや図面などを画面上に配置し、関係者全員で共有しながら作業を進められるのが最大の利点となっている。また、検査工場が複数ある場合でも画面を切り替えるだけで対応可能であり、従前に比べ大幅な作業効率化や時間短縮を図ることができるという。
出典:會澤高圧コンクリート
現場の計測者は、ヘルメット一体型のMRデバイス「XR10」を装着して計測を行う。MR技術によって計測者の眼前の空間に現在の計測箇所の図面や計測項目が表示され、計測者はそれを確認しながら計測ができる。計測の様子は、XR10のカメラを通してリアルタイムで撮影され、その映像がPCブラウザの画面に送信される。XR10はハンズフリーで操作が可能なため、計測と撮影に集中することができるようになっている。
出典:會澤高圧コンクリート
一方、現場の指揮者は、iPadで検査項目を選択しながら検査の全体を進行。役所内にいる発注者とコミュニケーションを取りながら、現場指揮者は手元で入力した計測結果を即座に役所と共有できるため、作業効率が高く、ペーパーレスな検査を進めることができる。またiPadのカメラでは、XR10を使って計測を進める現場計測者の映像をリアルタイムに送信し続けるため、計測データの確実性を担保することにつながる。
出典:會澤高圧コンクリート
MRの建築土木への活用について、AIZAWA代表の會澤氏は「MRは現実空間があくまで主で、そこにデジタルのオブジェクトを様々にインポーズして組み合わせることができることから、建築との親和性が高く、建築DXを推進していく重要なツールのひとつになる。
まずは既存の立会等をデジタル化、遠隔化、効率化するところからスタートしたが、すべての設計は三次元でデータ化され、将来、コンクリート部材の製造や物流、そして現場での施工フェーズにも切れ目なく使われて行くことになるだろう。大型プレキャスト製品の設計データが1対1のスケールで現物のプレキャスト製品と現場でツインを形成し、製品の寸法精度などを瞬時に判定するなど、品質管理の完全自動化も視野に入ってくる」と語る。
□會澤高圧コンクリート株式会社
會澤高圧コンクリートとハニカムラボ MR活用の遠隔臨場支援システムを共同開発
リリース記事:https://www.aizawa-group.co.jp/news2021062901/