建築現場用のロボット向けAI自律移動システムが開発

sugitec

記事のポイント

・鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)と株式会社Preferred Networks(以下、PFN)が、ロボットが現場内を自律移動するシステム「iNoh(アイノー)」を共同開発した。

・「iNoh」はGNSS(全球測位衛星システム)や事前設定をすること無く、ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境の認識ができるようになるシステムだ。

建築現場向けロボットの自律移動システム実用化第一弾の導入開始

鹿島建設とPFNは、建築現場で使用するロボットが現場内を自律移動するためのシステムである「iNoh(アイノー)(商標登録出願中)」を共同開発した。

このシステムを搭載することで、GNSSや人が事前設定をすることなく、各種ロボットが自己位置や周辺環境をリアルタイムに認識することができるようになり、日々状況の変化する現場内を安全に確実に移動することができるようになる。今回、この「iNoh」を初搭載したAI清掃ロボット「raccoon(ラクーン)(商標登録出願中)」が開発され、首都圏の現場へ導入されたという。


出典:鹿島建設

鹿島建設では生産性向上や働き方改革実現に向け、建築現場でのロボット活用を進めている。一方のPFNでは自動運転やロボットの自律移動に必要な深層学習による高度な物体認識・制御等の技術を有しており、その実用化を目指し建設業界向けとして鹿島建設と共同研究に取り組んできている。

建築現場では、工事進捗に応じ周辺環境が刻々と変化していく他、屋内となる作業も多く、GNSSによる位置計測は難しい。そのため、建築現場内におけるロボットの自律移動の実現においては、多くの技術的な課題があったという。

システム開発と概要

2018年、両社ではそれらの課題に取り組むべく共同研究を開始。現場画像や3Dデータ、図面情報の収集と深層学習等、現場での試行実験を重ね「iNoh」の開発に至ったという。

iNohの機能

1.マルチセンサによる自己位置推定および3次元空間マッピング(SLAM)
魚眼カメラやLiDAR(レーザー測距)、IMU(慣性計測装置)など複数のセンサーを高度に統合することで、変化の激しい非GPS環境においても自己位置の正確な推定が可能。得られたデータから3次元空間をマッピング。

2.深層学習による高度な周辺環境認識
深層学習技術を用い、現場の膨大な画像データを学習することで、障害物や高所作業車などの移動物、立入禁止エリア、作業員などを正確にかつ安定して認識することができる。

3.リアルタイムナビゲーション
ロボットが自己位置や周辺環境を認識し、障害物を回避した作業ルートをリアルタイムに自動生成することで、作業範囲を限定するマーカー類の設置など、人による事前設定が不要となり、現場に納入後は即利用することが可能だ。


出典:鹿島建設

raccoonへの実装

両社では、このiNohを初実装した建築現場用のAI清掃ロボットである「raccoon」を共同開発した。結果、100分の連続稼働で約500㎡のAreaを清掃できるなど、その実用性が確認されたという。尚、清掃には2つのモードが搭載される。

・おまかせ清掃モード:現場内の地図や作業員の指示がなくても、自ら清掃可能エリアを探索しながら自律清掃を行う。

・領域清掃モード:清掃可能エリアの地図を自動作成後、連携する施工図面上から清掃領域の指定が可能。


出典:鹿島建設

両社では今後の展開として、このraccoonを鹿島建設の現場へ順次展開していくという。併せてiNohを巡回ロボットや資材搬送ロボットなどに搭載し、建築現場へのロボットの普及・展開を促進し、さらに自律移動が求められる他産業のロボットへの展開も視野に入れていくという。


□鹿島建設
建築現場用ロボット向けにAI技術を搭載した自律移動システムを開発
リリース記事:https://www.kajima.co.jp/news/press/202103/4a1-j.htm

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