株式会社クリーク・アンド・リバー(以下C&R社)は、ドローン開発を行うサイトテック株式会社(以下サイトテック社)と共同で、山間部を中心とした、「物流・輸送、林業、土木・建設、医療・災害、計測・調査」の5つの分野で、最大離陸重量25kg以上のドローンを活用した重量物運搬の検証を実施した。
上記の5分野等において、山の急斜面での運搬作業は人的負担やリスクが大きく、作業効率化やコスト削減を目的に、大型ドローンの導入が求められている。また、中山間地での物流においても、ドライバー不足等の課題を背景に、ドローンが新たな輸送手段として期待されている。
しかし、山間部は気候変化が激しく、また電波障害も起こりやすいことに加えて、安全な離発着場所の確保も難しいといった課題がある。C&R社では、ドローンを活用した重量物運搬の実用化に向け、2020年に実施した検証データやノウハウをもとに、定常的な運航実績を積み重ねながら機体やオペレーションを改善し、またUTMを始めとする周辺システムとの連携や環境整備など、関連企業や行政とともに進めていくという。
実施された重量物の運航プロジェクトの詳細に関しては以下となる。
実施されたプロジェクト
主なプロジェクト
1.物流・輸送(八ヶ岳連峰における山小屋への物資輸送)
・実施時期:9月上旬~11月下旬
・場所:長野県茅野市
・協力:黒百合ヒュッテ、蓼科山荘、蓼科山頂ヒュッテ、Local.Video.Shop.(株)
・詳細:標高2,500m前後にある山小屋へ(片道約2km、最高高度差約640m)米、お酒、アイゼン、ビールサーバー、使用済みシーツやゴミ回収など安全で燃費の良い最適な飛行ルートを設置し、最大15kgの日用品を輸送。
2.林業:苗木や林業資材の運搬
・実施時期:5月、11月
・場所:岐阜県郡山市(5月)、長野県北安曇郡池田町(11月)
・主催:岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアム、C&R社 | 長野県林業職員協会、長野県森林組合連合会
・詳細:岐阜県-往復2kmを自動飛行し、苗木やTUBEXを運搬、また土砂が崩れて足場の悪い急斜面な山の中腹に、林道から1日300kgのイボ竹を上げる検証。
長野県-木杭・滑車・ワイヤー・チルホールなどの林業資材(最大20kg)を片道約300m、谷間を挟んで運ぶ等の林業関係者向けデモンストレーションを実施。
3.土木・建設:作業場へ建築資材(長さ4mの鉄パイプや足場板)の運搬
・実施時期:6月
・場所:山梨県南巨摩郡早川町
・主催:(有)久保田組
・協力:山梨県企業局
・詳細:南アルプス北岳の支流樽沢の補修業務にて、これまでにヘリコプターで運搬していた単管パイプ(4m×2本=22kg)や足場板など建築資材を往復約1400m、ピストン輸送にて3日で約1トンを運搬
4.医療・災害:緊急時に陸上輸送が困難な場面を想定した医薬品の搬送
・実施時期:10月
・場所:広島県広島市安佐北区
・主催:大手医療機関
・協力:安佐北区役所、大林学区自主防災会連合会、(一財)大林愛林会、広島工業大学 田中健路教授
・詳細:過去に豪雨による土砂災害で孤立状態に陥った広島県安佐北区で、陸上輸送が困難な場面を想定した医薬品(15kg)の搬送の実証実験を実施。距離約300m、高度差100mでの目視外となる条件下、離陸から荷降ろし、帰還、着陸まで全て自動で、中身の品質を維持したまま届けることに成功。
4-2.消防隊との水難救助共同訓練
・実施時期:11月
・場所:山梨県南巨摩郡身延町(本栖湖)
・主催:峡南消防本部
・詳細:昨今の大雨等の災害による川や湖での水難事故を想定した救出・救助訓練において、ドローンで水に浮かぶ救助用ロープや浮き輪、20kgとなるブイを投下し、特別救助隊員との連携による共同訓練を実施。
5.計測・調査:グリーンレーザーやガス分析機器などを搭載しての計測・調査
・実施時期:8月
・場所:山梨県南巨摩郡身延町(サイトテック練習場)
・主催:大起理化工業(株)
・詳細:ドローンに取り付けたFTIRガス分析装置で、25m、50m上空各3地点においての、大気中のガス濃度を測定するモニタリング試験を実施。
実証で使用されたドローン
サイトテック社の独自開発・製造・販売の機体。パートナーシップを拡大し、継続的なバージョンアップを行っている。
サイトテック社:https://saitotec.com/products/
・「YOROI6S1750F」
カーボンシェルを採用した堅牢かつ軽量な機体。最大積載量30kg。防水性、耐風性に優れ、プロペラ6枚で1枚が破損しても姿勢を保てる。多種多様なユニットを取り付けることで様々なシーンで利用できる汎用型タイプ。
・「KATANA12D1750F」
上下プロペラ12枚、最大離陸重量140kgを誇る重量物運搬ドローン。ユーザーの要望に合わせカスタマイズ可。フライトコントローラにはPixhawkを使用している。
ドローン運搬の実運用化にあたっては、オペレーションコストを下げ採算性を上げる必要がある。最終目標は全自動化となるが、現時点では導入する企業内で本業と兼務する社員を育成するか、地域密着の業者がオペレーションを担いコスト削減することが求められている。
C&R社ではこれまで培ってきたノウハウを研修カリキュラムに反映した人材育成の促進と、全国各地での運営パートナーの構築を進めていくという。
株式会社クリーク・アンド・リバー
最大離陸重量25kg以上の大型ドローン活用、山間部における重量物運搬の実運用化に向け前進
~土木建設現場における資材運搬、山小屋への物資輸送の実証実験などを実施~
https://www.cri.co.jp/news/press_release/2020/20201223003306.html