ソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク)と、双葉電子工業株式会社(以下双葉電子)は、橋梁や鉄塔、建設現場などでの点検をはじめ、測量や災害支援に活用できる産業向けドローンの共同開発を2020年9月より開始しており、この度、機体のプロトタイプを製作したとの発表があった。
製作されたドローンは、双葉電子の産業用ドローンをベースとしており、LTE通信対応のモジュールを搭載している他、ソフトバンクの高精度測位サービスの「ichimill(イチミル)※」に対応している。
LTEを利用することで、ドローンを遠隔地から制御できる他、撮影した映像をリアルタイムに送信することが可能だ。また、「ichimill」を活用することで、誤差数センチメートルの精度での飛行制御が可能となり、空撮画像の位置情報も高精度化するという。
※ichimillとは
準天頂衛星「みちびき」などのGNSSから受信した信号を利用したRTK測位を行うことで、誤差数センチの測位を可能とするサービス。
ソフトバンクの独自基準点が受信した信号を基に、「測位コアシステム」で補正情報を生成し、ソフトバンクのモバイルネットワークを通してドローンなどに搭載されたGNSS受信機(移動局)へ補正情報を配信する。この補正情報とGNSS受信機が受信した信号を活用してRTK測位を行うことで、誤差数センチの高精度な測位がリアルタイムで可能となる。
共同開発の背景
近年ではドローンによる空撮を活用した点検作業の効率化や、高所作業の代替えをはじめとし、様々な産業でドローン活用ニーズが拡大しており、こうした背景からソフトバンクは2019年10月から自動飛行や自動撮影等に対応したドローンサービス「SoraSolution」を提供開始。今後はサビの検知や差分検知など、AIを活用したデータ解析機能の実装を予定している。
また、双葉電子では、カスタマイズ性と耐風性に優れた全天候型の産業用ドローンを提供している。そんな中、インフラ業界や鉄鋼業界から、情報管理などの観点から国産ドローンを導入したいという要望が寄せられているという。そこで両社は、互いの技術やノウハウを活用した国産の産業向けドローンの共同開発を開始し、今回のプロトタイプの製作に至った。
共同開発する産業用ドローン
両社が共同開発する産業用ドローンは、橋梁や鉄塔、工場、建設現場などでの点検をはじめ、測量や災害支援などでの活用を想定。双葉電子の産業用ドローンをベースとし、LTE対応の通信モジュールを搭載している他、RTK測位によって誤差数センチの測位ができるソフトバンクの「ichimill」に対応している。
出典:ソフトバンク
特長
1.画像や映像のリアルタイムな送信が可能
LTE対応の通信モジュールを搭載しており、空撮画像、映像をリアルタイムにクラウドへ送信可能。また機体の位置情報やバッテリー残量などのテレメトリー情報もリアルタイムに送信できる。
2.飛行時の機体の安定性が向上
LTEの利用によってドローンを遠隔地から飛行制御可能。また「ichimill」の活用で、誤差数センチの精度でドローンの飛行制御ができるため、機体の安定性が大幅に向上する。
3.撮影画像の位置情報の精度が向上
「ichimill」を活用することで、ドローンで空撮した画像の位置情報も誤差数センチの高精度で測定できる。これによって画像に写っている対象物を特定しやすくなる他、オルソ画像の歪みも少なく鮮明になり、地図データと重ねたときの精度が向上する。また、「SoraSolution」で提供予定のサビ検知や差分検知など、AIを活用したデータ分析サービスを使用する場合も、より精度の高い結果を自動算出することが可能となる。
4.悪天候下でも安定飛行が可能
ラジコン業界のトップメーカーである双葉電子のノウハウを活用し、トップクラスのパイロットが高速応答性に優れた機体を最適にチューニングすることで、風速15m/sの環境下でも安定した飛行を実現する。
両社では今後、ドローンの機能改良を進めるため、2020年度から21年度にかけて実証実験を行い、ソフトバンクの法人向けドローンサービスの「SoraSolution」のサービスラインアップに追加するそうだ。
また、機体側でAIによる解析を行うことで、GPSなどの測位衛星の信号が届かない環境においても安全自動飛行ができるドローンの実現や、5G通信の実装も視野に入れた研究開発を進めていく。
◆ソフトバンク
ソフトバンクと双葉電子が産業向けドローンを共同開発
~LTEとセンチメートル級の高精度測位に対応した国産ドローンを開発~
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20201217_02/