清水建設株式会社が、米国のカーネギーメロン大学(以下CMU)と共同で、ドローンで計測したRC構造物の画像情報から、微細なひび割れ情報などの損傷情報も反映した高精度な3次元モデルを形成できるシステムを開発した。尚、このシステムはインフラRC構造物の劣化予測技術の高度化を目的としている。
今後、高精度3次元モデルをベースに構造物の耐力や余寿命をシミュレーション解析する技術の開発を進め、データ計測から評価・診断までワンストップで対応できるインフラ劣化予測システムの確立を目指す。
出典:清水建設
背景
近年、高度経済成長期に集中整備されたインフラ構造物の老朽化が進んでおり、適切な維持管理で構造物の長寿命化や事故災害のリスク低減を図ることは喫緊の課題となっている。
しかしその一方で、それらインフラ構造物の維持管理を担う技術者は減少しており、これら課題解決のためには目視点検を代替するICT計測技術や、構造物の劣化状況を的確かつ高精度に診断・予測できる解析技術の開発が不可欠だ。
そのような状況の中、両社はインフラ劣化予測システムの共同研究開発に着手した。今回報告された成果はその共同研究開発の第一フェーズの位置付けとなる。シミュレーション解析の精度を高めるために不可欠である損傷状況までを正確に反映した構造解析モデルの自動生成に向けて、従来技術では実現できなかった位置・形状の誤差を数ミリレベルに抑えた精緻な3次元モデルの形成を実現している。
システムの概要
開発されたシステムは、ステレオ画像計測とLiDARによるレーザー計測を併用できるドローン搭載型のシステムとなっており、独自のアルゴリズムによる3次元モデル化手法、画像から構造物の変状を抽出する画像解析AI技術が組み合わせられ構築されている。
構造物の3次元計測は、高解像度カメラ2台で構成されるステレオカメラと、LiDARを組み合わせた計測装置が利用され、写真等の取得データから3次元形状を高精度に形成するという。具体的にはドローンに搭載した計測装置で対象の構造物を計測し、ステレオカメラが取得した3次元点群データの測位精度をLiDARの位置情報で補正・補強することで、精緻な形状の3次元モデルを形成する。
出典:清水建設
併せて画像解析AIが、ステレオカメラの高解像画像から検出したひび割れ形状を3次元モデルに重ねることで、損傷情報を包含した高精度な3次元モデルが完成する。3次元モデル形成は、橋長200m程度の一般的なRC橋梁を対象にした場合、計測含め数日程度で完了するという。
出典:清水建設
この共同研究開発の第一フェーズでは、清水建設が開発項目の設定とRC構造物の計測、CMUがドローン制御、3次元モデル化手法、ひび割れAI検出等の技術開発を担当。
今後、これに続く第二フェーズでは、ドローンの自律飛行制御等、計測・評価技術の高度化を図るとともに、清水建設が構造解析・診断等の技術開発を担い、インフラ劣化予測システムの完成を目指すとのことだ。
清水建設
ドローン画像から損傷情報も反映したインフラ構造物の高精度3Dモデルを形成
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2020/2020039.html