このたび清水建設株式会社は、米国のカーネギーメロン大学(CMU)と共に、インフラRC構造物の劣化予測技術の高度化を目的とした、ドローンでのRC構造物の画像情報から、微細なひび割れ等の損傷情報を反映した高精度な3次元モデルを形成できるというシステムを共同開発した。
今後はこの高精度3次元モデルをベースとした構造物の耐力や余寿命をシミュレーション解析する技術開発を進め、データ計測から評価・診断までワンストップで対応できるインフラ劣化予測システムの確立を目指していく。
出典:清水建設
背景
国内では高度経済成長期に集中的に整備されたインフラ構造物の老朽化が進んでいる。そのような中、適切な維持管理によって構造物の長寿命化や事故災害のリスク低減を図っていくことが社会的課題となっている。
その一方でインフラ維持管理を担う技術者等の人材は減少傾向となっており、これら課題の解決のためには目視点検を代替するICT計測技術や、構造物の劣化状況の的確かつ高精度な診断・予測ができる解析技術を開発していくことが不可欠である。
そこで同社とCMUは2018年3月に、インフラ劣化予測システムの共同研究開発に着手。この成果は共同研究開発の「第一フェーズ」という位置付けで、シミュレーション解析の精度を高めるために不可欠である「損傷状況まで正確に反映した構造解析モデル」の自動生成に向け、従来の技術では実現できなかったという、位置・形状の誤差を数ミリレベルにまで抑えた精緻な3次元モデルの形成を実現したという。
システム概要
この開発されたシステムは、ステレオカメラによる計測とレーザー計測(LiDAR)をUAV(ドローン)に搭載し計測するもので、独自のアルゴリズムによる3次元モデル化手法、画像から構造物の変状を抽出する画像解析AI技術を組み合わせたものとなる。
具体的に構造物の3次元計測では高解像度のカメラ2台で構成されたステレオカメラとLiDARを組み合わせた計測装置を用い、取得した画像等データから3次元形状を高精度に形成するものとなる。
出典:清水建設
その計測装置をドローンに搭載し対象構造物を計測、ステレオカメラが取得した3次元点群データの測位精度をLiDARの位置情報で補正・補強することで、精緻な形状の3次元モデルを形成する。
併せて画像解析AIがステレオカメラの画像から検出したひび割れ形状を3次元モデルに重ねることで、損傷情報を包含した高精度3次元モデルができる。3次元モデルの形状は橋長200m程度の一般的なRC橋梁を対象にした場合、計測を含めて数日で完了するという。
出典:清水建設
この第一フェーズでは、同社が開発項目設定とRC構造物の計測を行い、CMUがドローン制御、3次元モデル化手法、ひび割れAI検出等の技術開発を担当した。
これに続く第二フェーズでは、ドローンの自律飛行制御などの計測・評価技術の高度化を図るとともに同社が構造解析・診断等の技術開発を担い、インフラ劣化予測システムの完成を目指していくとのことだ。
清水建設
「ドローン画像から損傷情報も反映したインフラ構造物の高精度3Dモデルを形成」