こんにちは。近年の様々な業界で抱えている労働者不足問題。ドローンで配送を効率化しようとしている物流業界もドライバーの減少や高齢化によって人手不足の状況にあります。
物流業界の課題としては、人手不足の他にもネットショッピングの売上拡大で配達個数の増加とともに再配達も増加することによる労働生産性の低下や、物流量が増加することによる交通渋滞などがあります。特に再配達問題に関しては、都内では約35%が不在配達となっているというデータもあり、あまり良くない状況といえます。
これらの課題を解決する技術として有力視されているのがドローン物流ということで、この度「佐川急便株式会社」が「一般財団法人環境優良車普及機構」の「過疎地域等における無人航空機(ドローン)」を活用した物流実用化事業」に係る公募に採択されたとのこと。
地方自治体とドローン活用による複数拠点間輸送の実証実験へ
同社では、各地方自治体※と共同で、2020年度中に離島や山間部におけるドローンを用いた複数拠点間輸送に関する実証実験の開始を目指すとのこと。
※各地方自治体
島根県邑智郡美郷町(人口:4,517人/20年10月1日現在)
香川県小豆郡土庄町(人口:12,924人/20年8月1日現在)
福井県丹生郡越前町(人口:21,093人/20年8月1日現在)
この実証実験は、ドローンの機材提供ならびにオペレーション全般を「イームズロボティクス株式会社」が。各地方自治体との協議会の運営等を「一般社団法人空の駅協議会」の全面協力を得て行うそうです。
配送の流れ
荷物は、佐川急便の各営業所から特定の配送拠点へ荷物を輸送した後に、そこからドローンを用いて地域の公共施設を中継点として経由し、終着点までの輸送を行うものとなっています。なお操縦については同社の東京本社を拠点とし、遠隔地からの目視外操縦でドローンを飛行させるとのこと。
山々の連なる島根県の美郷町での複数拠点間輸送を皮切りに、瀬戸内海に浮かぶ小豆島の土庄町は、ドローンによる離島間の海上輸送、日本海に面した越前町では、開発中の169MHz帯を活用したドローンにより災害時を想定し、一般的な携帯電話のLTE通信回線が途絶した場合でのドローン飛行の実証実験を行うそうです。
出典:佐川急便
使用ドローン
出典:佐川急便
背景
近年の物流業界では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で宅配の需要が高まる一方で、将来的な少子高齢化にともなった担い手不足が懸念されています。
特に離島や山間部などでは、船舶輸送や山越えが必要で、また集落間の移動距離が長いなどの地理的な特性もあり、今度このような地域においては、現状の輸送手段のみではサービス品質の維持が困難になることが想定されており、新たな手段の検討が求められています。
国際社会においては「SDGs」や「パリ協定」などの取り組みが求められており、同社ではCo2排出量削減などの地球温暖化防止を目指した環境保全活動を行っています。
また同社は「災害対策基本法に基づく指定公共機関」として、災害時に国や自治体と協力し緊急事態に対応するという責務を有しており、被災地へ救済物資を届けるという目的でも、ドローン配送は有力な手段であると位置付けているとのこと。
まとめ
実証実験は本年度中の実施を目指している、ということでまだ実際に実証を行う前段階になっています。12月には実証を行うという情報もありますので、そこから実用化に向けて着実に進んでいくことでしょう。
物流業界といえば、もう1社クロネコヤマトが思い浮かびますが、クロネコヤマトはかなりドローンに力を入れている印象があります。
以前にクロネコヤマトのドローン配送を紹介したことがありますが、多くの企業が想定している配送拠点からのラストワンマイルをドローンに置き換えるというパターンではなく、配送拠点までの配送をドローンに置き換え、配送拠点からのラストワンマイルは移動式宅配ロッカーを兼ねる自動運転車で届けるという、かなり実現可能性の高い現実的なものとなっています。
いずれにせよ、ドローン配送が拡大していくにはまだまだ乗り越えるべきハードルが色々とありますが、労働者不足の課題も深刻化していきますので早期の実用化が望まれます。