こんにちは。昨今では様々な業界でドローンを活用した点検技術が開発され実証されています。基本的には高所や人が立ち入ることが困難な場所に対し活用されることが多く、最近では蒸気配管などが通る洞道や天井裏などの狭小空間にも小型のドローンを活用する事例が増えています。
本日はそんな狭小空間を点検するべく「京浜急行電鉄株式会社(京急電鉄)」が、「株式会社Liberaware」と「株式会社サムライインキュベート」との共同で、小型ドローンを活用した実証実験を実施した話題をご紹介。
DX技術による商業施設の設備保全高度化を目指す
この3社による取り組みは、京急電鉄の新規事業の創出を目指す「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM(京急アクセラレータープログラム)」の第三期の一環となっています。
実証実験では、Liberawareの開発した狭小空間特化型の小型ドローン「IBIS(アイビス)」が活用され、京急百貨店の天井裏等の点検業務が実施されました。
狭小空間特化型ドローンの「IBIS」は以前にJR東日本新宿駅の天井裏点検の実証実験でも使用されていました。
狭小空間特化型ドローン「IBIS」
出典:Liberaware
サイズ:191×179×54mm(プロペラガード込)
重量:170g(バッテリー込)
飛行時間:最大8分間
装備:LED照明、防塵モーター、超高感度カメラ 他
特徴:狭小空間でも安定飛行できる性能を特徴する。現在、製鉄会社や電力会社、石油コンビナート等の大型プラント設備を保有する企業を中心に、煙突内、配管内、ボイラー内などの点検に活用されています。
Liberawareと京急電鉄では、京急グループが所有する商業施設やオフィスビル等において、安全管理の側面よりドローンを活用した設備点検の導入を検討しているとのこと。
出典:Liberaware
今回の実証は、京急百貨店にて人が立ち入ることが困難な天井裏等について、暗所でも鮮明な画質の動画が撮影可能な狭小空間特化型ドローンの「IBIS」を活用した実証実験を実施。
実証実験の内容
実施場所の特徴と課題
①地下1F変電設備室
特徴:建物全体の電気系統を司る部屋。天井からの水漏れ等は建物全体に影響する。
課題:ダクトや配線が天井に張り巡らされており死角が多い。
出典:Liberaware
②3F婦人服売り場エリア
特徴:法定点検を課せられている特定天井ではないが、それに準ずる天井高の空間。
課題:天井裏点検は安全確保のため重要だが、現状では全体を一度に点検できない。
出典:Liberaware
検証項目
①IBISの飛行
・直接目視が難しく狭小な空間である天井裏にて「IBIS」が安定飛行できるか検証。
・ダクトや配線で死角が多く、直接目視ができない箇所も安定飛行できるか検証。
・高い天井高の場所についても延長アンテナを使い、操縦者が高所作業車に上がらずドローン操縦できるかを検証。
②映像品質
・「IBIS」が撮影した映像がトラブルを確認でき近接目視の代替となり得るか検証。
・水漏れの有無の確認が可能な品質か検証。
・天井面部材と吊り金具がしっかりつながって固定されていることを確認可能な品質かの検証。
検証結果
①IBISの飛行
・縦横50cmの空間で障害物に触れることなく安全に遠隔操作できた。
・下から見上げると死角になっていまう箇所についても安定して飛行できた。
・延長ケーブルを使った遠隔操作、安定飛行ができた。
・インターネット及びLANケーブルを活用し、点検現場から離れた別室にてドローンのリアルタイム映像を視聴することができた。
②映像品質
・人が立ち入ることが難しい空間や死角となっていまう空間も、近接目視と変わらないレベルで点検ができた。
出典:Liberaware
上記の検証内容と結果から分かるよう実証実験の結果から、危険を伴う高所、人が立ち入ることが難しい狭小空間、である天井裏の点検を、近接目視と変わらないレベルで実施できるという結果となっています。
出典:Liberaware
まとめ
この実証実験の結果を踏まえ、Liberawareと京急電鉄は京急グループの商業施設における「ドローンによる天井裏点検」の導入に向け、引き続き検討を進めていくとのこと。
狭小空間をドローンで点検するという事例も増加してきました。それもそのはずで、通常は天井裏などの点検を行う際は足場の架設などが必要となる上に、人による目視等の点検となるのでかなり大きなコストと時間も掛かります。
今回の京急百貨店で言うと、従来の変電設備の足場架設による調査方法では、1回につき約300万円以上の費用が想定されているそうです。ドローンを使うことによってどのくらい費用や点検日数が圧縮されるかは継続検証しているそうですが、流石にドローンでの調査は大幅に効率化されるものと思われます。