こんにちは。コンクリート材の中にバクテリアを混ぜ込むことで、そのバクテリアの作用によってひび割れを自動的に修復するという自己治癒コンクリートの国内独占販売権を得て話題となった「會澤高圧コンクリート株式会社」。
同社はPC建築分野へ本格参入し、道北エリアへの大型プレキャスト製品の供給を強化するべく、その足がかりとして深川工場に新棟を建設。と同時に、ロボットアーム式のコンクリート3Dプリンタも導入しています。
そのロボットアーム式の3Dプリンタを用いて、新棟を建設している深川工場の敷地内に上下水道が不要となる自己完結型のトイレを製作したとのこと。
外装は3Dプリンタで印刷した自己完結型のハイテクトイレ
會澤高圧コンクリートでは、現在新棟を建設中の深川工場の敷地内に、ロボットアーム式のコンクリート3Dプリンタを使って積層造形した国内で初となる小規模建築物となる公衆トイレを二基建設。20年9月16日に一般公開されています。
ちなみにそのロボットアームですが、オランダの「サイビー・コンストラクション」という企業との技術交流を通じてABB(スイス)製の大型アームロボット式を導入したとのこと。
この製作された二基のトイレのうちの一基は、インドに向けて作られたプロトタイプのものとなっています。これは同社の持続可能な開発目標「SDGs」の6番目の目標「安全な水とトイレを世界中に」という取り組みの一貫でもあるとのこと。
出典:會澤高圧コンクリート
同社ではこのトイレの開発にあたり、女性スタッフを中心とする開発チームをインドへ派遣。現地のニーズや課題となっていることを探ったそうです。
インドでは野外排泄による水質汚染が申告な社会問題になっていること。トイレ自体が不浄なものとして設置していない家庭も多く、またトイレを使用する上での治安が確保されていないケースが少なくないようです。
トイレ整備を進めるにも、都市部を除き下水道などのインフラが整っていないなどの理由から、水洗式を全土に普及させるには膨大なコストと時間がかかってしまうという状況のようです。
これらの課題を解決するには、上下水道と連結せずに使用できる自己完結型の公衆トイレの普及を急ぐべきという判断をし、バイオによるトイレの処理技術や空気中から水を抽出する技術を持ったベンチャー企業などと協業し、外装を3Dプリンタで印刷した自己完結型のハイテクトイレの試作に至っています。
3Dプリンタ活用の概要
出典:會澤高圧コンクリート
3Dプリンタは速乾性の特殊モルタルをロボットアームのノズルから抽出し、印刷する仕組み。型枠を必要とせず複雑なテクスチャーの構造物をスピーディーに造形可能。
ただし日本ではコンクリートが建築基準法上の指定建築材料となっており、特殊モルタル等の使用には大臣認定等の性能評価が必要です。そのことから、今回の例ではプリントした中空状の外装を型枠代わりにし、その中にコンクリートを充填し配筋を施した鉄筋コンクリート造の構造体としているそうです。
ハイテクトイレの概要
バイオテクノロジーが活用されたこのトイレでは、「正和電工」が開発したおがくずを使用するモジュールを採用。スクリュー付きタンクにおがくずを充填することで、おがくずが排泄物により保水。
出典:正和電工
その後タンクに設置されているヒーターにて加熱し、スクリューで撹拌することで排泄物の90%の成分である水が蒸発。残った10%の固形物をバクテリアが分解し、発散するという仕組みです。
特別な菌の使用は不要で、排泄物に含まれている腸内細菌と自然界に生息している微生物との働きで水と二酸化炭素に分解処理。蒸発も分解もされない無機成分だけが残り、粉状態でおがくずに吸着。これを肥料にできるということです。
安全確保のための技術
また、使用に際しての治安の部分に関しては、インドではスマートフォンが広く普及していることに着目し、トイレ用のスマートロックを「メディアスケッチ」と共同開発。
トイレの開閉をスマートフォンだけで行えるだけでなく、ブロックチェーンを活用し、自分の前の利用者の利用状況をレーティングできる仕組みを導入しているのが特徴。これには「次のひとのためにトイレをきれいに使う習慣」を定着させるという狙いもあるそうです。
まとめ
コンクリート3Dプリンタを導入することで、構造物をスピーディーに製作できる所から各種ブロックチェーンなどの先端技術を導入し、他国の持つ課題とSDGsの目標に対しピンポイントにアプローチできているのが素晴らしいですね。
近年では様々なテクノロジーがありますが、それを自社や業界の為に活用するだけでなく、国外・世の中の課題の為にどう活用していけるか、という所まで視野広げて考えることも重要だと考えさせられます。