3Dスキャナを用いた切羽掘削形状のモニタリングシステム

sugitec

こんにちは。トンネル工事では、発破後にアタリと呼ばれる設計予定の断面よりも内側に残った掘り残しが発生する場合があります。

その掘り残し部分に対し、あたり取りという後から掘削して整形する作業が必要となりますが、その作業をする前の掘り残しの確認では、作業員が切羽の直下に入って目視確認を行っているそうです。

直接岩盤の下にいるので落下の危険性のある作業となり、改善が求められる部分となりますが、この度「西松建設」「株式会社ビュープラス」「ジオマシンエンジニアリング株式会社」の3社が「切羽掘削形状モニタリングシステム」という、安全性と生産性をアップするシステムの試行を行ったとのこと。

トンネル掘削の余掘り・余吹きを20%低減する

上記3社の開発した「切羽掘削形状モニタリングシステム」ですが、2019年の2月に開発されているシステムで、実際の現場での試行が木原道路内畠トンネル工事で実施され、トンネル掘削の余掘り・余吹きを20%低減することが確認されたそうです。

この技術は国交省の令和元年度「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト試行技術」に採用されたとのこと。

背景

山岳トンネル掘削時のあたり取り作業では、作業員が切羽の直下に立ち入り、目視にて整形の必要な箇所を判断してレーザーポインター等で重機オペレーターに指示を出していたそうです。


出典:西松建設

切羽は地山が露出しており、岩塊の抜け落ち(肌落ち)が発生すると、死傷災害につながる可能性が高い危険な作業場所となっています。

厚生労働省からも「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」においては原則的に切羽への立ち入りが禁止が示されているそうです。

そこで同社は、あたり取り作業の安全性向上と効率化を目的とし、高速3Dスキャナを使用し切羽掘削断面を計測し、設計断面と比較することであたり箇所を迅速に可視化する「掘削形状モニタリングシステム」を開発し、システムの現場試行を実施しています。


出典:西松建設

システム概要

システムは、発破・ずり出し完了後の切羽において、あたり取りを行うブレーカー等の重機に搭載した高速3Dスキャナで切羽の掘削形状を計測。


出典:西松建設

掘削形状の点群データと設計断面を比較し、設計断面線より内側に残ったあたり箇所を重機キャビン内のモニターにヒートマップ表示させることで、重機オペレーターが容易にあたり箇所の確認が可能。


出典:西松建設

重機オペレーターは運転席モニター画面のヒートマップ表示を基にあたり作業を行うので、従来のような作業員が切羽の直下に立ち入って目視で確認する必要がなくなります。

高速3Dスキャナが任意に配置した工法の特殊基準球を自動探索することで、トータルステーションとの連動が不要となり、計測時間も大幅に短縮しています。

運転席モニター画面から計測開始の指令を出して結果が表示されるまでが50秒程度であり、掘削サイクルに影響を与えること無く、効率的なあたり作業を実現しています。

現場試行で得られた成果

・安全性の向上

3Dスキャナをあたり取りを行う重機に搭載することで、作業員や監視職員が切羽直下に立ち入ることなく、重機運転席で安全にあたり箇所の確認およびあたり取りを行うことが可能。

・あたり箇所の可視化

あたり箇所の判断はこれまで熟練作業員による目視確認による定性的なものであり、余掘りが増加する傾向にあったそうですが、3Dスキャナで切羽の掘削形状を計測し、3次元点群データとトンネル線形情報、設計断面情報を基に可視化することで、定量的にあたり箇所を把握することが可能に。

・迅速な計測

高速3Dスキャナをブレーカに搭載することで、自己位置推定に約35秒、切羽の掘削形状の計測から結果の表示までに約15秒、合わせて50秒程度で計測が完了するため効率的なあたり取り作業が可能。

・余掘り、余吹きの低減

切羽掘削形状の点群データから算出される余掘り量を毎切羽毎に算出し、発破パターンの見直しを行うことで、余掘りの少ない効率的な発破掘削が可能。また、予定吹付コンクリート量を現場バッチャ―プラントと共有することで、残コンの発生を抑制可能。検証ではシステム導入前と比較し、余掘り・余吹きを約20%低減することができたとのこと。

・高い汎用性

架台等一部を除き市販品にて構成されており、汎用重機に後付できることから汎用性が高くなっています。

まとめ

点群データには様々な活用方法がありますが、これも点群データをうまく活用した事例になっています。点群データとトンネルの線形、設計断面情報を可視化することで、これまでできなかった定量的な把握を可能にしています。

また、後付けができる汎用的なシステムになっていることは大きなポイントで、これにより現場への導入のし易さとこれを活用することで、現場で一番大事な安全面も担保されることは大きいですね。

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