コンクリート構造物の削孔作業の自動化機器が登場

sugitec

こんにちは。既設の構造物に対する耐震設計等の見直しが進められている昨今、古い耐震基準で建設されたコンクリート構造物は部材のせん断耐力、じん性が不足しており、各地で既設構造物に対する補強が進められています。

ちなみに「せん断力」とは部材の上と下から互いに反対に荷重を加えると、断面がずれるように変形しますが、それに対する抵抗力です。例えば消しゴムの上面と下面に対して互いに逆方向に力を加えると斜めに変形するような力のことです。

それを補強するためにコンクリートを削孔し、そこから補強筋を入れることで補強する事を「あと施工せん断補強補強」と言いますが、その際の削孔作業を対象に自動削孔ができる装置が「奥村組」より開発されたとのこと。

既存鉄筋コンクリート構造物の補強工事に伴う削孔作業を自動化

同社では、既存の鉄筋コンクリート構造物の補強工事に用いられる「あと施工せん断補強工法」および「あと施工アンカーを用いた壁等の増設工法」における削孔作業の省力化、効率化を図るため、自動削孔装置を開発。RC壁試験体を用いた性能確認実験により、所定の性能を有することが確認されたそうです。

開発背景

あと施工せん断補強工法および、あと施工アンカーを用いた壁等の増設工法では、それぞれせん断補強鉄筋、増打ちコンクリートとの一体性を高めるアンカーを既存RC構造物に埋め込むために削孔する必要があります。

通常、挿入孔は削岩機や電動ハンマードリル等を用いた人力での作業となりますが、削孔数が数千箇所にも及ぶ場合もあり多大な労力を要することから作業の省力化、効率化が求められています。

装置概要

同社では、あと施工せん断補強工法および、あと施工アンカーを用いた壁等の増設工法における削孔作業の自動化に取り組み、それぞれ工法に合わせて2種の自動削孔装置を開発。


 出典:奥村組

①大径用自動削孔装置

あと施工せん断補強工法のせん断補強鉄筋挿入孔(最大の削孔径Φ40mm程度)を対象とする空圧削岩機を用いた自動削孔装置。削孔方向に最大1,200mmスライドし、上下方向のストローク1,750mmおよび左右500mmのエリア内の移動が可能。


出典:奥村組

②小径用自動削孔装置

あと施工アンカーを用いた増設方法の削孔径が小さく深さも浅いあと施工アンカー挿入孔(最大削孔径Φ25mm程度)を対象とする、電動ハンマードリルを用いた自動削孔装置。電動ハンマードリルを削孔方向に最大300mmスライド可能で、上下方向のストローク1,500mmの移動が可能。


出典:奥村組

両装置ともに可動範囲内を削孔計画に従って自動で削孔し、削孔位置、削孔深さ、削孔数、削孔時間等の施工結果データを自動で記録するとのこと。なお、削孔計画および削孔結果はパソコンと装置の制御盤間を無線LANで伝送可能。

自動削孔中に削孔ビットが既存RC構造物内の鉄筋に接触した場合、削孔速度の変化による自動判定で削孔を中止し、次の削孔に移るように制御されているそうなので、既存鉄筋への損傷を極力抑えることができるとのこと。また、削孔中に生じる粉塵は集塵機と集塵カバーにより飛散防止にも配慮。


出典:奥村組

まとめ


出典:奥村組

この両装置はRC壁の試験体を用いた性能実験で、削孔位置・削孔深さは人力の施工と同等の精度を確保できることが確認され、またそれにより作業の労力軽減、作業時間の短縮を図れることも実証されたそうです。

削孔作業は人力でやるのが基本で、内容によってはかなり労力が掛かるものですが、位置から深さ、開ける孔の数まで設定された値で、施工後の結果データまで自動的に記録してくれことで従来からかなり省力化が図れそうですね。

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