こんにちは。本日は下水道管渠の維持管理に関する技術のご紹介。下水道管渠の総延長は全国で約48万kmあり、そのうち標準耐用年数である50年を経過した管渠の延長約1.9万km(総延長の4%)が、10年後には6.9万km(14%)、20年後には16万km(33%)と急速に増加していく状況のようです。
出典:国土交通省
そんな現状なので修繕等を行わなければならないのですが、その前には当然調査をする必要が出てきます。その調査部分をAIにより効率化する技術が、「奥村組」と「株式会社ジャスト」により開発されました。
自動検出による調査業務効率化と損傷判定品質の確保を実現
両社は、下水道管渠の維持管理における管渠内部の調査業務を効率化しつつ、損傷判定品質の確保を実現する「AIを用いた下水道管渠の損傷検出システム」を開発。
背景
標準耐用年数である50年を経過する下水道管渠が今後急速に増加していくことは間違いなく、それに伴ってそれらに対する補修や改築などの老朽化対策の要否を判断するために行う調査のニーズが高まる見込みです。
その一方で労働人口の減少により、調査・診断業務を行う熟練技術者不足が懸念されているのが現状です。
システム概要
下水道環境の詳細調査には二つの方式があり、直視レンズのテレビカメラ機器で管渠内部を撮影し、現場でその映像をもとに損傷箇所を検出するとともに、その損傷判定の結果を映像に付記して録画する「従来型テレビカメラ調査」。
もう一つは、広角レンズのテレビカメラ機器で管渠内部を撮影し、事務所で録画映像による損傷判定等を行う「広角テレビカメラ調査」となります。
広角テレビカメラ調査のメリット
この広角テレビカメラ調査ですが、側面や天井を撮影する際にカメラを上下左右に操作する必要がなく、管渠の内部をテレビカメラが自走しながらスムーズに撮影する上に、損傷判定等の作業を天候の影響を受けない事務所内で行える利点があるので、今後の主流になると見込まれているそうです。
今回開発されたシステムは、その広角テレビカメラ調査にAIを用いて技術者の判定結果を高精度に再現するものとなっており、このシステムを導入することで、調査業務のさらなる効率化と損傷判定品質の確保が実現可能とのこと。
出典:奥村組
システムの適用対象は、管径Φ200mm~Φ800mmの鉄筋コンクリート管と陶管で、広角テレビカメラで撮影した動画を、既存ソフトを使用し展開画像への変換と画像分割を行った上でシステムに入力します。
その画像をAI解析して、取付管の位置や管のジョイント位置といった「管構造情報」と、損傷位置や種類、傷の程度などの「損傷情報」を1スパン(約30m)あたり15秒程度で取得が可能。
そして損傷箇所の抽出はAIがおこなうので、技術者はこれまでのように全延長を確認する必要がなくなり作業量が軽減。その上、解析結果としてシステムから自動出力される損傷情報を付記した展開画像、および管構造情報と損傷情報のリストの確認に注力ができるため、損傷判定精度の向上も見込めます。
この出力された解析結果は調査報告書の資料としても活用が可能で、報告書の作成業務も軽減されるとのこと。
出典:奥村組
まとめ
このシステムですが今後実際の調査業務に適用をし、現在行われている調査方法との業務効率の比較を行ったり再現性の検証を行っていくとのこと。
今後、老朽化していく下水道管渠がかなりのスピードで増加していくのは間違いありませんので早期の実用化が望まれますね。