こんにちは。政府主導の働き方改革関連法の施行から早1年。様々な業界で作業の効率化や、人手不足問題の解決のために最新のテクノロジーを用いたソリューションの導入が日々進んでいます。
それらはAIやAR/VR、ドローン、ロボットによる作業の代替えなど枚挙にいとまがありません。実際に汎用性が高く効果の高いものや限られた条件でのみでしか効果が期待できないものなど、その内容も様々。
本日は、ちょうど昨年あたりから話題になっていたソフトバンクロボティクスのAIを搭載した自動清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」の話題。果たしてこのロボットを使用することで、実際にどこまで人の清掃と変わるのかというのをソフトバンクロボティクス社が、ゼネコンの熊谷組と共同で調査したそうです。
オフィスビルを対象とした清掃に関する実態調査
「ソフトバンクロボティクス」は、AI清掃ロボット「Whiz」の清掃能力の評価をおこなうため、「株式会社熊谷組」と共同で、オフィスビルを対象とした清掃に関する実態調査を実施。
1.実施概要
調査概要としては2つのオフィスビルを対象とし、ATP(汚染物質)の拭き取り検査による床のきれいさと、「微生物センサBM-300C」を用いた室内浮遊菌量の測定を実施。人の手による清掃時と、AIロボット「Whiz」による清掃時の清掃具合に関する比較調査となります。
2.調査の結果
この調査の結果、2つのオフィスビルにおいても床の清掃具合と浮遊菌量に相関性が認められたとのこと。「Whiz」での継続的な清掃によって、生物汚染度が減少して維持されるとともに、室内浮遊菌量も大きく減少し、非常に清浄な室内空間が創出されているということが分かったそうです。
さらに、人の手による清掃時の室内浮遊菌量は2万〜3万で、比較的きれいな室内空間だったそうですが「Whiz」での清掃を2〜3日行った後では、室内浮遊菌量が4,000〜6,000まで減少し、1万を大きく下回る結果に。
この結果から、従来の人の手による清掃では取り切れない「隠れダスト」を全面清掃で効率的に除去することで、床の綺麗さをむらなく高めると同時に、室内空間の清浄度の向上にも効果的であることが分かる結果となりました。
ちなみにこの浮遊菌量とは、空間の花粉や菌などの有機物を測定するもので、空間にいるウイルスを測定するものではないとのことなのでご注意を。そもそもウイルスと真菌は基本的な構造からその大きさまで全く異なるものです。
出典:熊谷組
ATP(汚染物質)の測定値と清浄度の判定について
オフィスビルなどで主流になっているタイルカーペット床を中心に、116ヵ所の様々な床面の調査を通じて床の清掃具合をATP測定で判定する基準を定めたもので、7,000RLU以下を維持することが良好な清掃状態として定義されています。
なお、「Whiz」の使用前後におけるATP測定値は、清掃前の平均値6,221に対し清掃後の平均値は3,902で、「Whiz」による清掃で2,000RLU程度の数値を減少させることができるなど、共通して床の清掃具合への高い効果が得られたとのこと。
出典:熊谷組
床面のATP測定値とダスト量の相関関係
生物汚染度の測定値である「RLU」が1,000、2,000、5,000、6,000、1万と異なる5地点で、最低5日間「Whiz」による清掃を実施し、100㎡および10回の使用に合わせて、回収したダスト重量を計測した結果、ATP測定値とダスト量には正の相関関係があり、ATP測定値が高い床面は、ダストが多くあることが検証されたそうです。
出典:熊谷組
床面ATP値と室内浮遊菌量の関係
これは、床面のATP値に対し相当する真菌細胞数を推定したもので、10平方センチメートルの拭き取り面積で1万RLUが得られた場合、真菌細胞10万個の存在に相当すると推定。
出典:熊谷組
つまり、1万RLU以上の床面を1歩歩くだけで、数万個の真菌細胞をまき散らす可能性があることとなり、繰り返しまき散らすことで、室内浮遊菌が数万個/立法メートル以上となることが推定されるとしています。
まとめ
下図は住宅や事務所、工場などの様々な室内空間において「微生物センサBM-300C」による浮遊菌量の測定を実施し定められた指標図となります。
出典:熊谷組
概ね40,000以下の数値であれば空間はきれいに保たれていると言えそうです。今回の調査では、人の手による清掃で約2〜3万、AIロボットのWhizで4,000〜6,000まで落とせたという結果。
ロボットに任せておくだけで、あくまで数値上だけで見ると約5倍の仕事をしていることになります。ただ自動的に清掃をしているだけでなく、見た目の清潔感はもちろんですが、目に見えない空間部分まできれいに保ってくれているという優秀なロボットだということが分かりましたね。
もちろん、このロボットだけで全ての清掃を任せられるわけではないので、うまく人と連携・協力することでより効率的な作業ができそうです。