こんにちは。本日は産業分野等でも活用が拡大しているARの話題。株式会社日立製作所が、YAMAGATA株式会社と京都機械工具株式会社の2社とともに、ARを活用した鉄道車両向けのボルト締結作業の管理システムを実用化。
ちょうど1年以上前に同システムが開発されたというご紹介をしました。あれから1年ちょっとを経ていよいよ実用化となります。
AR技術を利用したボルト締結作業管理。さらなる作業効率と品質向上を実現
この技術はAR(拡張現実)を利用した鉄道車両向けのボルト締結作業を管理するシステム。ヘッドマウント型のスマート端末のディスプレイ上に締結すべきボルトの位置や、そのボルトを規定された力で締結したかを確認することができます。
力の確認にはメーターが表示されており、デジタル処理による作業記録の自動管理も可能にします。
日立では、ようやく実用化となったこのシステムの適用範囲を段階的に拡大し、鉄道車両の製造作業を効率化するとともに、品質面でもさらなる向上を目指すとのこと。
背景
鉄道車両に製造において、機器類を固定するボルトが走行中に緩むことがないように確実にボルトを締結し、その結果を記録する必要があります。
日立ではこれまでに、デジタル式のトルクレンチとタブレットPCで締結力の判定と記録を自動でおこなうことのできる「デジタルトルクレンチシステム」というシステムを活用していたそうですが、この方法の場合、作業者がタブレット上で作業対象のボルトを選択し指定をする必要がありました。
出典:HITACHI
また、作業者がタブレットで指定したボルトと、実際に締結したボルトが一致しているかの確認をシステム上で自動判定することができない為、作業者と検査員が複数回に渡り確認していたそうです。
このような課題があり、さらなる作業効率・品質向上を目指して、「ヘッドマウント型スマート端末とAR技術を利用したボルト締結作業管理システム」を開発し、実用化に向けた現場実証を進めてきたとのこと。
製造現場の他、メンテナンス、修繕の現場にも
この度、システムの現場実証を通じ、技術・運用面における課題の抽出・評価を行いシステムの実用化に成功。従来ではタブレットPC上に指定されたボルトと、実際に締結したボルトが一致しているかの確認に手間がかかっていたそうですが、今回のシステム実用化で効率的に作業が可能に。
このシステムではヘッドマウント型のスマート端末のディスプレイ上でボルトの一致を確認することができるのが従来との大きな違いです。
出典:HITACHI
具体的には、ディスプレイには締結すべきボルトの3次元モデルが表示され、事前に入力した3次元モデルに付随する設計データを基に作業員を誘導。スマート端末に付属しているカメラが締結作業を常時監視し、デジタルトルクレンチとの連携で指定のボルトが規定の力で締められたかを自動的に判定します。
指示通りの作業ができたと判定されれば次の作業指示が表示。作業が不十分だと判定されれば再度作業指示がでるようになっているそうです。ARで目の前にボルトが出てくることで確認の手間が無くなり、作業指示まで出る。これで効率的にならない訳がないですね。
まとめ
一般的に、AR技術を駆使したシステム運用には3次元設計データやコンピュータグラフィックなどが必要とされていますが、このシステムではボルトの位置座標と締結力からなる簡単な表形式データを活用することで利用できるそう。
また、熟練者の作業を記録したデータをAR作業指示データとして再利用することができ、製造のみならずメンテナンス、修繕の現場へも容易に対応することが可能とのことです。
鉄道車両向けのボルト締結とありますが、色々と活用の範囲を広げることはできそうですね。この技術で熟練技術者でなくとも同等の作業を行っていける環境が整えられそうです。