こんにちは。近年では社会インフラの老朽化が進んでおり、早急な点検や改修が求められていますが、それはビルなどの建物でも同様です。
特にビルの中でも高層になればなるほど調査が難しくなるという課題があります。例えば超高層ビルの上層部をカメラ等で撮影しようと思うとかなりの望遠レンズが必要になりますし、赤外線カメラ等はそもそも撮影できる高さに限界があります。
足場に関しても枠組みなどでは、原則として高さが45mを超えてはいけないとされています(許容強度等検討した上であればできないことない)。
そこでドローンを活用して、高層レベルのビルを効率的に点検できないかという新たな実験が行われたそうです。場所は都市部の人口集中地帯。超高層ビルの「中野サンプラザ」。
「超高層ビル」という物は法律等では定義されていないそうですが、建物の構造や基準が変わる60m(20階建相当)以上の建築物を指すのが一般的のようです。ちなみに中野サンプラザの高さは92mということで超高層ビルに該当します。
超高層建物安全点検調査技術の開発
この実験ですが「国立研究開発法人 建築研究所」と「西武建設株式会社」及び「一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会」の共同研究課題の「無人航空機を活用した中高層建築物の点検・維持管理等技術に関する研究」の一環とのこと。
中野サンプラザにて、ドローンによる安全面を重視した建物点検調査実験が行われました。
出典:建築研究所
・日時:3月17日(火)11:00~13:00
・開催場所:中野サンプラザ(〒164-0001 東京都中野区中野4丁目1-1)
・実験内容:ドローンによる外壁点検調査実験(ラインドローンシステムによる安全な飛行技術)
実験概要
1.研究背景
近年ドローンを建物点検に活用しようというニーズが高まっています。しかし、建物の多くは都市部に集中しており、人口密集地域での墜落は大きなリスクとなりことから、普及が遅れています。
今回のこの実験では中野サンプラザの外壁(高度約100m)をドローンによって調査し、その模様を公開。
2.実験目的
この実験は都市部における超高層建築物を安全に点検するための実証実験で、ドローンによる安全な点検方法の確立と都市部でのドローン活用の先鞭をつけることを目指しているそうです。
3.ドローンによる点検調査方法
・下画像の赤い線の範囲がドローンの飛行範囲。この範囲を飛行させ写真撮影をおこない調査します。
・撮影した画像データから劣化等の建物の健全性を判別。
※ちなみに今回の実験で得た調査データは、今のところ公開する予定はないとのこと。
出典:建築研究所
4.安全な点検調査方法
・ラインドローンシステムを使用。
・屋上から地上にラインを垂らし、そのライン上でドローンが飛行する仕組み。
・ラインとドローンを物理的に拘束することで、操作不能になった際のフライアウェイのみならず、もし万が一墜落してしまっても墜落位置を特定することができます。
出典:建築研究所
まとめ
高層ビルであっても、ドローンを活用すれば従来の調査方法よりも効率的に調査ができるというのは周知されているとはいえ、特に高層ビルのある都市部などは人口密集地帯であるため、リスクを考える部分が大きかったのかもしれません。
そのような理由でなかなか取り組みは進んでいなかったのが現状でしたが、今回の実験ではビルの外壁に沿って「ライン」を設置しそれをドローンに通すことで、変な方向に飛んでいったり墜落した際のリスクを軽減しています。
このラインドローンシステムはおそらく以前にご紹介したことのある「MAC-FACTORY」社のものでしょう(特許&商標登録済)。
ビルは高くなればなるほど、その検査にはかなりの手間と時間そして安全面の問題もあります。しかしラインドローンを活用することで、検査の早さはもちろん周囲の安全面もクリアすることが可能となるので、今回の実験をきっかけに活用が拡がりそうです。