こんにちは。スギテックでも日々向き合うことの多い「外壁タイル」。タイル張りされた建物の外壁はその意匠性や耐久性の高さで、これまで多くの建物に採用されてきています。
しかし建物の耐久性を上げる機能がある一方で、劣化による剥落事故などで大きな事故を引き起こしてしまうリスクも持っているのが外壁タイルであります。近年、タイルの剥落事故をニュースで見たという方も多いでしょう。
主に外壁タイルは建物の躯体へ下地モルタルを調整し、そこにタイルを張り付けるモルタル張り(湿式工法)と、躯体に有機系の弾性のある接着剤を下地に用いて直張りしていく、有機系接着剤張り工法(乾式工法)があります。
近年ではモルタルを用いたやり方はほぼ行われておらず、接着剤での直張りが主流になっています。
理由としては、躯体が気温や湿度などの外的環境要因で変形した際に、モルタルの場合その変形に追従できず、それがタイルの剥離や剥落につながる可能性があるからです。逆に有機系接着剤の場合は弾性があるので、変形の応力が緩和され剥離や剥落の可能性がかなり少なくなる、というのが理由です。
しかし過去に建てられた建物ではそのモルタル張りが多く、今だ数多くの建物で外壁タイルの剥落の危険性があると思います。今後それらが有機系接着剤工法に刷新されたり、これから有機系接着剤工法を行う建物に対して、ライフサイクルコストを低減できる技術が「東急建設」で開発されたそうです。
建物のライフサイクルコスト低減に向けた「コンクリート表面評価システム」
東急建設は、鉄筋コンクリート造建物の外壁タイル施工において、コンクリート打設後にタイルの下地となる壁面の不陸(凹凸)を3Dスキャナで計測・記録するシステム「コンクリート表面評価システム」を開発。
出典:東急建設
背景
近年の外壁タイル張り工事において、従来のモルタルを用いた張り付け工法ではなく、タイルの剥離・剥落の危険性が少ない有機系接着剤を用いた工法が普及しています。
これまで建物の外壁タイルの定期調査報告は、竣工後10年ごとに「全面打診調査」等を行うこと、とされていますが、2018年5月には国交省が、有機系接着剤工法の場合においては一定条件を満たすことで労力の少ない「引張接着試験」で差し支えないとの技術的助言が示されています。
しかし全面打診調査を行う場合、建物全体に足場を設置する必要があり、多くのコストと時間を要します。一方で引張接着試験の場合は、足場が不要となるため建物のライフサイクルコストを抑えることが可能となります。
下地調整塗材を下地に塗布した記録の計測法を開発
この全面打診調査を引張接着試験に置き換えるためには、モルタルを使用していないということを示す必要があります。
具体的には「外壁タイル下地調整塗材等を下地に塗布した記録」が必要となりますが、人による従来の作業では正確性確保が困難であり、また記録の作成に多くの時間と労力がかかります。
出典:東急建設
そこでこの課題を解決するため、同社では新たに3Dスキャナを用いた計測・記録の手法を開発。これによって「外壁タイル下地調整塗材等を下地に塗布した記録」というエビデンスを蓄積することが可能となります。
竣工後10年毎に外壁タイルの剥落危険性を確認する定期劣化調査が、より労力の少ない方法で可能になり、建物のライフサイクルコストを低減できます。さらにタイル工事の精度向上や生産性向上も可能になります。
コンクリート表面評価システムについて
「コンクリート表面評価システム」(特許出願中)は、3Dスキャナにより広範囲に及ぶ壁面形状のデータを短時間で正確に取得。
その得られたデータをもとに記録書を作成することができます。これにより全面打診検査免除に必要となる「外壁タイル下地調整塗材等を下地に塗布した記録」を適切に作成することが可能。
出典:東急建設
また3Dスキャナを用いた計測により、下地調整作業者(協力会社)が作業前にあらかじめ壁面不陸部分を特定することができ、下地調整作業者の作業効率が向上します。
まとめ
同社では今後、この外壁タイル下地の壁面不陸の計測・記録に留まらず、AR等の活用で記録データをiPadやウェアラブルカメラ等で可視化させ、下地調整作業者の作業効率をより向上させる手法を研究していくとのこと。
有機系接着剤工法であることが前提となりますが、システムで記録をつけることでコストの削減はもちろん、作業者にとっても作業効率が劇的に上がることから、非常に有用なものになりそうですね。