こんにちは。いよいよ2019年も残り1週間となりました。バタバタとされていると思いますが、今年最後やり残しのないよう残り少ない日数ですがしっかりとやっていきましょう。
さて、土木・建設現場でもここ数年で着実に浸透してきているICT、IoTやAI等のテクノロジー。現場で用途ごとに使うというのも勿論ですが、現場にいる各作業員の状況や機械の情報を把握したりといった、現場全体を1つのネットワークとして管理している統合管理システムもあります。
本日は清水建設が現在も開発を進行中という、統合管理型の次世代トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」をご紹介。
現場の生産性と安全性を向上させるシミズ・スマート・トンネル
昭和元年の1764年に開通した、日本国内で初めて掘られたトンネルである大分県の青の洞門。その後は明治から昭和に至る全国のインフラ整備に伴って、数多くのトンネルが造られています。
多く造られてきたことで当然堀削技術も磨かれており、この50年でトンネル技術は飛躍的な向上と遂げ、構造物の大きさに見合う機械の大型化もほぼ完了しています。
出典:清水建設
同社ではICT、IoT、AI等の最新技術を活用した、次世代型のトンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手。現在はシステムを構成する要素技術を進行中で、2020年度中には完成が予定されています。
シミズ・スマート・トンネルに組み合わされる要素技術
この統合管理システムですが、トンネル建設工事の従事者や建設機械、作業環境、建設地周辺の自然環境など、あらゆる情報を集約し、AI解析に基づくガイダンス情報をリアルタイムに現場にフィードバック。それにより、トンネル現場の施工における生産性と安全性の向上を目指す、デジタルツイン統合管理システムとなります。
デジタルツインとは、現実世界にある製品等の物の情報をそっくりそのまま仮想現実空間に送ることで、現実世界と同じ物を再現できるというもの。現実世界での動きや振る舞いなどまで完全に再現できるのが大きな特長であり、通常のシミュレーションとは異なる部分です。
余堀り量低減システム「ブラストマスタ」
発破堀削により生じる余掘りと呼ばれる無駄を低減する技術。余掘り量を従来比40%以上低減することができ、生産性向上が期待できる。(余掘りとはトンネル堀削で本来堀削すべき設計断面より広く堀削した為に余分に生じる堀削量)
出典:清水建設
切羽崩落振動監視レーダーシステム
振動可視化レーダー技術を用いて、切羽断面の振動をモニタリングするシステム。切羽崩落の予兆を検知した際には、アラートを発報し退避を促します。これによって山岳トンネル工事における切羽崩落災害の根絶を目指します。
出典:清水建設
行動モニタリングシステム
特殊カメラを用いて、狭隘なトンネル坑内での機械と作業員の位置や動線情報を3次元データで取得し、作業方法や作業環境を評価・分析。安全性の向上に寄与。
出典:清水建設
覆工コンクリート自動締固め
セントルと呼ばれる移動式型枠に総数60台のバイブレーターを設置し、打ち込んだコンクリートの高さのバイブレーターを自動制御し、コンクリートを締め固める技術。
従来のコンクリート締固めは、狭隘な作業空間で移動も多いことから作業負担が重く、転倒や転落、披露に伴う注意力低下に起因する災害が発生していましたが、この技術で作業の省力化と同時に安全性の向上も図れます。
出典:清水建設
リアルタイム遠隔立会システム
タブレットを活用し、遠隔地にいる工事関係者でトンネル坑内のライブ映像と検査データをリアルタイムで確認しながら、品質・出来形検査の実施を可能にする技術。
この技術により、発注者の検査員が長時間かけて現地に赴くことなく、品質・出来形検査を行うことが可能。また、自席のパソコンで検査結果の確認と承認をすることも可能です。
現在は西日本高速道路と共同で、和歌山の山岳トンネル工事の品質・出来形検査の一部を対象に試験運用を行っているとのこと。
出典:清水建設
骨伝導ヘッドセット
トンネル内の騒音下においても、入坑者が防じんマスクや防音耳栓を着用したままの状態で、円滑にコミュニケーションができる通話システム。使用者がマスクを着用したまま通信相手の名前を声にすると、音声認識AIアプリが自動的に機能し、単数、複数の相手を選定し、自由に通話することが可能。
出典:清水建設
まとめ
これら紹介してきた要素技術は一例ということで、まだまだ様々な技術がシミズ・スマート・トンネルという統合管理システムにて管理されていくことになります。
統合管理することで得られるメリットは現場を丸ごと可視化できる以外にも、個別で使われているシステムにトラブルが起こった際に素早く特定、対応ができたり、それぞれで個別管理していたシステムが一括化されることで、運用にかかるコストの削減も可能になります。
今後の業界では熟練技能者の大量離職が始まり人手不足がより深刻になるのは避けられません。しかしこういったシステムが開発されることで、逆にこれまでよりも生産性や安全性を向上し、且つ人を選ばず品質も向上できるという大きな可能性がありますし、実際にそれは実現可能になるでしょう。