こんにちは。ＡＩを活用した診断系の技術は数多く世に出てきていますが、カメラなどで写真を撮影しその画像からひび割れなどの劣化を診断していくのが基本。
今回ご紹介するのはＡＩを活用した「橋梁劣化推定」技術で、点検の際に動画撮影を行い、その動画からＡＩで劣化を推定するという世界初の技術です。
この技術「橋梁劣化推定ＡＩ」は、「ＮＴＴドコモ」と「国立大学法人京都大学」の共同開発となります。
カメラによるお手軽な点検・診断で老朽化したインフラの早期補修・長寿命化を促進
この技術は橋梁を走行する車両と、車両の通過時に発生する橋のタワミや揺れを動画で撮影することで、それをＡＩで劣化推定します。
この「橋梁劣化推定ＡＩ」と呼ばれるシステムは世界初の開発となり、2019年12月9日～2020年9月30日の期間、富山市の八尾大橋にて実証実験が行われるとのこと。
出典：ＮＴＴドコモ
背景
国内では１０～３０m程度の長さの橋梁が多くを占めており、それらの点検は目視や打音による方法が一般的。しかしその方法では技術者の技量によって判断が異なる場合が多い他、さらなる問題点として経験豊富な技術者の不足や足場の設置が必要になる場合、点検コストが高くなるという課題があります。
近年ではドローンなどを活用した表面のひび割れや腐食などを、画像解析で検出する点検が進められていますが、表面にひび割れが現れる時点ですでに重大な損傷になっていることが多いです。
そのため、老朽化の進むインフラを効率よく点検する技術や、早期補修のために劣化推定のできる技術が求められています。
橋梁劣化推定ＡＩ概要
この技術は橋梁と橋梁上を走行する車両を動画撮影し、車両の重量を推定したうえで橋梁の複数点のたわみ（変位）から橋梁が劣化しているかをＡＩで推定します。
出典：ＮＴＴドコモ
橋のたわみは劣化だけでなく、車両の重量によって影響をうけるため、車両の重量を推定したうえで橋のタワミを解析することが劣化を正しく推定することに繋がります。
また、車両通行量や設置環境などそれぞれの橋梁の状況が異なるため、定期点検やモニタリングで橋梁ごとのデータを蓄積することでＡＩでの劣化推定精度がより向上していくことが期待されます。
技術の開発状況
模型の橋梁実験において、一眼レフカメラで撮影した動画から橋梁上を走行する車両の重量と、車両通過による橋梁の複数点のタワミを同時に推定できることを確認。
また、これらの情報にもとづきＡＩを用いることで模型橋梁上の異常を検出することにも成功したそうです。
出典：ＮＴＴドコモ
まとめ
今後橋梁点検や劣化診断作業への有効性や検出精度の検証を進め、2022年ごろまでのシステムの実用化と将来的に橋梁の維持管理への実現を目指すとのことです。
2020年には５Ｇ通信のサービスが始まりますが、この技術が実用化を目指している2022年頃には５Ｇ通信も普及していることでしょう。
そうなると４Kや８Kの高精細で大容量の動画も低遅延で軽々扱えるようになるので、より精度が高い橋梁点検が可能になるのは間違いなさそうです。
