こんにちは。昨日和歌山県でビルの屋上から解体中の足場の鉄パイプが落下し、それが通行人に当たり死亡したという痛ましい事故が発生しました。
この事故が起こる4日前にも同様に鉄パイプを落下させており、安全対策を徹底すると申し出ていたそうですが、わずか4日後にまた起こすというのは安全に対する意識が甘すぎたとしか言いようがなく、こうなってしまうといくら後悔しても取り返しが付きません。
安全に関しては我々も決して他人事ではありません。こういった事故などは安全意識を忘れた時にやってくるもの。安全作業に対する意識をより一層高めていかねばと思います。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします。
さて本日ですが、カメラメーカーの巨塔であるキヤノンが、インフラ構造物の点検事業に参入するという話題。これまでカメラとレンズで蓄積されてきた知見が存分に生かされそうです。
インフラ構造物点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」
キヤノンは橋梁やトンネルなどのインフラ構造物の近接目視点検の代替手段として、画像とAIを活用した画像ベースインフラ構造物点検サービスの「インスペクション EYE for インフラ」を19年12月下旬より開始。
出典:キヤノン
背景
高度経済成長期に建設された社会インフラ構造物は、今後年数が経つにつれて老朽化が加速度的に進むことが懸念されています。
出典:国土交通省
そのような状況の中、早急な定期点検が求められていますが、国交省の定めている定期点検では近接目視が基本で時間と労力がかかる上に、高所などでは足場の架設も必要となりコスト面・安全面で課題を抱えています。
そんな背景から国交省では、19年2月に橋梁とトンネル点検要領を改訂し、高精細画像を使用した点検などで近接目視と同等の診断結果を得られる方法での点検作業も認めています。
構造物を高精細画像で記録するこで、近接目視では発見することに難しいわずかな変状も発見できるようになり、劣化兆候のいち早い察知が可能となります。
サービス概要
キヤノンでは「豊富なカメラ・レンズ群による高精細画像の撮影」「カメラメーカーとして長年にわたり蓄積した技術を生かした画像処理」「AIを活用した変状検知」の3サービスから構成される「インスペクション EYE for インフラ」の提供を開始。
このサービスは画像使用の点検に15年以上の実績を持つ「株式会社東設土木コンサルタント」と連携し、撮影・画像処理・変状検知のそれぞれでサービス提供を可能としています。
撮影サービス
出典:キヤノン
キヤノンの豊富なカメラ・レンズ群、自動撮影雲台やドローンなどの撮影機材を組み合わせることで、大規模・高所の点検対象や周辺地形など多様な環境下でも変状検知AIが必要とする高精細な画像を取得します。
画像処理サービス
出典:キヤノン
長年にわたり蓄積した画像処理ノウハウを利用し、斜めからの撮影画像を正対化する「あおり補正処理」や複数方向から撮影した画像を合成することで遮蔽物を除去する「遮蔽物除去処理」を実現。
変状検知サービス
同社が東設土木コンサルタントによる共同研究で開発した「変状検知AI」を使って、点検対象物のひび割れなどを検知。変状検知AIは幅0.05mmのひび割れも検知でき、ひび割れと間違いやすい特徴が多くある汚れた壁面などでも、ひび割れの検知が可能。
出典:キヤノン
某道路高架橋のRC床版において、近接目視で見つけたひび割れの約99%を検知するとともに、近接目視で見逃されたひび割れも検知することができ、近接目視の2倍以上の本数のひび割れを正しく検知することができたそうです。
まとめ
パナソニックや富士フィルムなど大手が続々と参入してきているインフラ点検ですが、ついにカメラメーカー大手のキヤノンも参入してきましたね。今やひび割れの検知サービスはかなり多くの企業からリリースされており、選択肢がかなり広がっています。
導入の基準がコストになることは多いと思いますが、今回のキヤノンのような「あおり補正」「遮蔽物除去処理」など、かゆいところに手が届く機能は現場によっては必須の機能になると思います。
個人的に「遮蔽物除去機能」は素晴らしいと思います。複数方向の写真を合わせて遮蔽物をなかったことにするので、遮蔽物の裏のひび割れ検出も問題ありません。これは某有名画像処理ソフトにも実装してほしいくらいです。
コストだけにとらわれずこのような機能を確認し、より工数を削減できる方向で導入するのが賢い選択と言えます。