こんにちは。管理人Hashitecです。昨日新たに台風15号ファクサイが発生しました。列島に本州に上陸するルートに入っており、来週の始め頃には上陸してきそうなので警戒が必要そうです。
台風以外でもゲリラ豪雨で水没したり、落雷で交通機関に被害があったりと、特に外で作業を行っている人は急な天候の変化に十分に注意していきましょう。
さて、本日は産総研(産業技術総合研究所)が薄い樹脂フィルムの表面に感度の高い温度検出部を、多数に渡り配列させることで温度分布を計測できるというセンサーシートを開発したという話題。
隠れた場所の温度分布まで可視化できる
普段「温度を計る」と言えば、体温計や温度計などの測定器で計りますが、通常それらの測定器は固定した1点を計測します。しかしそれら1点の計測方法では、測定器の固定方法やわずかな位置の違いでも計測結果が変わってしまうので、得られる情報も限定的になっていました。
出典:産総研
今回、産総研が開発した温度分布センサーシートは、フィルムの表面に多数の温度検出部が配列されており、その面内の温度分布を一括して計測することが可能になっています。
薄いシート状になっており、赤外線サーモグラフィーでは観察が困難な密閉空間や狭所などの温度分布も計測することができるそうです。
出典:産総研
また、そのセンサーシートは幅広い温度への対応を実現しているので、日常生活内での温度から、工場や製造装置などの温度管理など多岐にわたる温度分布計測への応用ができるそうです。
開発の背景
温度計測は日常生活と関わりの深い物理量計測。一般的な温度計測では計測器を取り付けた、ある1点の計測結果を用いることが多いが、計測対象の多くは熱源から末端にかけての温度分布が生じるため、特定の1点の結果のみで全体温度を正しく把握するのは簡単ではありません。
例えば体温計であれば、測る位置や固定方法によって計測結果が変わる、という現象は多くの人が経験しているのではないでしょうか?
正確な温度の分布を計測する際に優れた技術として知られているのが「赤外線サーモグラフィー」ですが、これは赤外線カメラの視野内の温度分布を視覚化できるのが特長です。
しかし測定対象をカメラの視野内に捉えて計測するため、他の物の背面に隠れた物体などの計測は当然できません。また撮影に関しても一定の焦点距離が必要になるため、狭い空間では計測が難しくなります。
こういったセンサーによる表に見えない部分の状態の可視化が必要とされるのは、IoTの推進には重要なこととなるためです。業務効率化や高度サービスにつなげるIoTでは、従来では測定が困難であった箇所の情報取得が求められます。
研究内容
開発された温度分布センサーは、樹脂フィルムの表面に格子状に並べた多数の温度検出部によって温度分布を測定するものです。下図は従来のものとの性能比較。
出典:産総研
計測可能な温度範囲を5~140℃に大幅に拡大したことで、様々な温度計測への応用が可能になっています。また、従来品では計測精度に課題があったそうですが、今回開発したセンサーでは、±1℃と実用十分な精度になっている他、0.3℃という僅かな温度差も見分けることが可能。
赤外線サーモグラフィーでは困難な温度分布計測を可能に
今回開発されたセンサーは、従来の赤外線サーモグラフィーでは困難だった様式の温度分布計測を可能にしています。下図は引き出し型の狭い加熱炉を持った装置を、開発されたセンサーと赤外線サーモグラフィーで撮影した結果の例となります。
出典:産総研
赤外線サーモグラフィーで撮影したものは表面の温度分布のみが計測されている状態ですが、センサーシートの方は内部の温度分布が取得できているのが分かります。
またこのセンサーシートですが、センサーに気流を当てることで、気流を受けて熱が奪われて生じる温度分布から気流の速度分布を取得することも可能となっています。
出典:産総研
まとめ
そもそも赤外線サーモグラフィーは内部の温度を計るためのものではないので、内部が計測できなくて当たり前。比較すること自体がナンセンスと思ってしまいますが、従来赤外線でやっていたことをこのセンサーに置き換えられたり、これがあることで新たにできる事は沢山ありそうですね。
計測しながらリアルタイムにデータをクラウドへ転送したりできそうなので、設備や機器の監視に役立ちそうですが、耐久性やシートの価格が気になるところです。