コンクリートの温度ひび割れ対策を効率化。新たな工法

sugitec

こんにちは。今週で8月も終わります。雨続きの天気になっていますが、9月に入っても相変わらず残暑が厳しい日が続くとのことなので、暑さにも急な豪雨にも十分に警戒していきましょう。

さて、本日は大林組がコンクリートの温度変化によるひび割れ対策に、電線管を活用した新たな工法を開発したという話題。

電線の設置や保護のために使用していた電線管を活用する「フレックスクーリング工法」

こちらの工法ですが、以前より電線の設置と保護のためにコンクリート内に埋設する形で使用されていた「合成樹脂可とう電線管(CD管)」をパイプクーリングに転用することで、鋼管を使用する従来のパイプクーリングよりも大幅に生産性が向上するそうです。


出典:大林組 CD管画像

「フレックスクーリング工法」と呼ばれるこの工法で使われるCD管は、すでに長年コンクリートに埋設され利用されてきたという実績があることから、耐久性にも優れている材料となっています。

コンクリートを適切に冷却することでひび割れを抑制

コンクリートは水とセメントの化学反応により硬化する際に熱が発生します。特に生コンクリート打設後数日間は反応が急速に進むために多くの熱が発生。その影響で温度ひび割れが生じる場合があります。

特に体積の大きい土木構造物になると発熱量も大きくなるため、温度ひび割れの効果的な対策が求められており、そのひとつにパイプクーリングがあります。

パイプクーリングはコンクリート内部に設置したパイプに水を循環させて、コンクリートを冷却することで温度ひび割れを抑制するという工法です。

パソコンなどでも、高熱を防ぎ安定した処理ができるように内部にパイプを通して水冷で冷やすタイプのものもありますが、それと同じような感じですね。熱が悪い影響を与える所には何がしかの対策が施されているものです。

鋼管パイプの課題点

パイプには鋼管を使用することが一般的ですが、その硬さから曲げや切断の加工に専用機械を使用する必要があるために、配置時に鉄筋などに干渉した場合、調整が困難になるという課題があります。


出典:大林組

また、1本が5.5mと短いことから接続部を多く設ける必要があり、それに対して漏水対策が必要になることや1m当たり約2.4kgと重いことから施工に労力を要します。

開発されたフレックスクーリング工法の特長

以上の課題点から、今回同社の開発したフレックスクーリング工法では、軽量、長尺で人力で自由に曲げることができるCD管を使用することで、従来のパイプクーリングと比べ生産性を大幅に改善させることが可能になる工法です。

1.冷却用パイプ設置時の施工性を改善

CD管は可とう性を有することから、加工せずに使用できることに加え、入り組んだ箇所への配置や鉄筋と干渉した場合にも容易に調整可能。さらに1mあたり約120gと非常に軽量なことから、鋼管と比べて効率的な施工が可能となっています。

2.接続部漏水防止のための処置が不要

CD管は1巻50mの長さを有するため、コンクリート内部に接続部を設けずに配管できることから、鋼管を使用する場合に必須だった接続部の漏水対策が不要となります。

3.従来工法と同等の冷却性能とコンクリート品質を確保

実施工での結果から、冷却性能は同径の鋼管と同じであること、およびCD管特有の凹凸形状にもコンクリートや冷却後に埋めたモルタルが隙間なく充てんでき、強度が低下しないことが確認されたそうです。

まとめ

この工法ですが、新幹線の橋梁コンクリートに適用した結果、鋼管を使用した場合と比較し、加工・配置に関わる作業時間を約70%も削減し、パイプクーリング全体のコストも約40%削減できたそうです。

これまで長年に渡って使用されてきていた、電線などを設置するために活用していたCD管をクーリング用に転用することで従来よりも効率化できたという珍しい事例。

冷やすことが目的であるので、イメージ的に鋼管を使った方が冷えそうな印象もありますね。しかし実際にはCD管でも鋼管と同等の冷却効果です。しかも設置時に取り回しやすいのでメリットしかありません。

なぜ今になって気づいたのか気になりますが、これまで続けられてきたやり方というのは多少気になる点はあってもそのまま続けてしまうという所はどの企業でもあると思います。

これまでやってきたやり方を整理しフィードバックした意見を色んな視点で協議することで、このような新しい発見につながることは多いかもしれません。

 

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